Stage 15 : サファリゾーンの熱血漢


 その後、ラナン――イゲタニシティジムリーダーの言う手順に従い、ヒロトはサイホーンの捕獲に成功し、サファリゾーンを出た。
「捕まえられてよかったなー! サイホーンは岩・地面タイプとはいえ、サファリ育ちのやつらは強いぞー。水タイプや草タイプ相手でも、結構面白いバトルをしてくれるからな」
 そのラナンというジムリーダーは、今までに会ったジムリーダーのうち誰とも違っていた。まず、笑い声が大きい。見た目もフィールドワーク向けで、知的な印象を受けることがない。ほんとにジムリーダーなのか、と、ヒロトが訝しむほどだった。
「で、そうそう、挑戦者なんだよな! ジムバッジは……四つか、やるじゃん。俺準備したらもうバトルできるけど、今日でいいか?」
「いいんですか」
「俺が早くバトルしたいんだよ」
 豪快な青年だ。ヒロトが何も返せないでいると、お前は? と逆にラナンが訊いてくる。
「では……今日! お願いします」

 すべての準備を整え、ラナンとともにジムに向かうと、おかえりなさいジムリーダー、という声がジム中を飛び交った。
「みんなバイト抜けてきたのかよ」
「ジムバトルは見たいでしょ、って。オーナーやっさしいから」
 ヒロトはジムのトレーナーたちを見回す。ほとんどがラナンと似た濃い肌で、ラフな服装をしていた。
「えーとじゃあ、使用ポケモンは」
 ヒロトがボールを持って言うと、ラナンは右手を振り、左手でボールをひと投げした。
 巨体のポケモンは、ボールから出てくるなりフィールドに寝そべった。
「このポケモンは」
「俺が使うのはこのケッキングだけ! 何匹使ってくれてもいいから、君のポケモンでちょちょいとやっつけちゃってよ」
「……」
 ヒロトは呆然とした。あまりにも適当すぎないか、と。
 それに、そのケッキングと呼ばれたポケモンは、呑気に欠伸までするのだ。調子を狂わせられっぱなしだが、とりあえず勝てたらバッジを貰える。まずヒロトは、一匹目のポケモンを出した。
「いくぜ、プルリル!」
 ふわふわ浮かぶプルリルを見て、ラナンはほーお、と声を出した。
「ノーマルタイプのジムリーダーってことを知ったうえでのチョイスだな、面白い」
「仲間になって日は浅いですが、それでも頼れるポケモンです。まずは、水のはど……」
「”不意打ち”」
 ぼそりとした呟きだったので、ヒロトには一瞬、何が起きたかわからなかった。とにかく、寝転んでいたケッキングが一瞬で覚醒し、プルリルより先に強烈な一枚を見舞ったのだ。
「え」
「プルリル、先頭不能。ケッキングの勝ち」
「ええー!」
 倒れたプルリルを抱きかかえながら、ヒロトはケッキングを凝視した。悪タイプポケモンであるようには見えない。
(それで、あの攻撃力……)
「次はどんなポケモン、見せてくれるの?」
 ラナンは鉢巻をなびかせ、不敵に笑った。

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