六匹集まったとはいえ、今すぐ顔を合わせる必要もないだろう。今ではサクハ地方も通信技術が他地方に追い付いてきたし、あちらに着くまでは荷物も少ないほうが良い。
 だから、モンスターボールは三つ。ナットレイと、ランクルスと、それからエアームド。  少しずつ北上、東進してきたから、ここからサクハはとにかく遠い。それでも、エアームドに、いけるか、と聞けば肯定してくる。旅費が浮くならばそれで私は構わない。
 長い帰路になるから、もう一度ライモンシティを眺めて目に焼き付けよう――と思ったのだが、世界を代表する地方の都市だというのに、住む人間はのうてんきだ。ただ、サクハ人よりも歩く速度は随分上だが。
「あ、スレンダーなお姉さん」
 観覧車を見上げているときに話しかけられ、目線を下げると、この地ではじめてアオイにあったとき一緒にいた少女がいた。
「観覧車乗りたいんですか?」
「違う。全体的に眺めていた」
「そうですねー、あっちのオフィスビルは高いし」
 言って、彼女はライモンのスカイラインを目でなぞる。
 都市は、縦に、横に、伸びる。それは先進的でないサクハでも同じだ。
「あ、いけない! そろそろ試合の待ち合わせ……」
「試合?」
「うん、ライモンジーブラーズ、私が応援してるサッカーチームです。友達と約束してるので」
 言った彼女の手には三枚のチケットが握られていた。アオイと行くのか、それとも。なにせ友達だけは多そうなタイプに見えたから、断定はできないが。
「友達、好きか」
「うん。みんな大切だよ、ねー、まっさん」
 彼女は隣にいたゼブライカ(まっさんというニックネームは斬新な響きがした)に言って、ゼブライカは元気にうなずいた。
「……そうか」
「お姉さんとも友達になりたいです。お姉さん背が高いから、どんな服も似合いそう」
「あいにくだが、もうイッシュは出る」
「えー、そうなんですか」
「残念でした」
 フレンドリーな彼女に合わせ、なんとなくペースに乗ってやると、ややしょんぼりしたが、すぐに顔を上げた。
「Best Wishes、良い旅を」

 良い旅を、ねぇ。と、イッシュを出る前に言われた言葉を思い出す。眼下、エアームドの翼の隙間から見えるものは、ひたすら山地か海、どちらかだ。
 旅というか、これから帰るわけだが。そして、今までの旅が良い旅であったのか。
 楽しくないことも多かったが、ひたすら強者に挑んで勝つという日々は、充実していたかもしれない。
 旅立ちの時より、マントは汚れてしまっている。ツキに何か言われたら、お互い様じゃないか、と笑ってやろう。
 私の戦いは、まだまだこれからなのだから。


 『流砂の放浪』で書くのはここまで、と決めていたので、一旦これで終了です。
 こういうタイプのキャラは今までにいなかったので、キャラ提供をしてくださった草菜さんにはひたすら感謝を。お子さんを貸してくださった方々にも感謝を。
 トリカのサクハ帰還、砂の民の長い戦いについて構想はあるので、早く本編を追い付かせたいものです。

 140418