Slide Show - 古今東西


 ガルーダシティについたステラは、周りを見渡して目を輝かせた。色とりどりの荷物を持って行きかう人々が、生まれ故郷を思わせたのだ。
 ガルーダシティ、ナズワタリの中心都市にして、壮麗なリントヴルム宮殿の城下町だ。
「なーなー見ろよーあの人ジャムいっぱい持ってるぞー! うまそー」
「ステラは気楽そうだな」
「いいじゃんかーこんな時こそ観光気分で! で、カグロのいとこってどこ住み?」
「ここだ」
 カグロは、ガルーダシティのレンジャーベースで買った地図を指す。
「ガラムタウン? 西のほうなんだな」
「ああ。ここからは、確かまた電車に乗る。フェニシティから先は歩きだ」
「は、マジで。もうグラグラして疲れるよー」

 ガラムタウンについた二人は、町の入り口付近に立っていたジムの看板をおもむろに見た。

 ガラムタウンジム ヤエとミオ 穏やかな火炎と刺すような氷

 看板にはそう書かれていた。
「ひょー、なんか怖そうな二人だな……って、どうしたカグロ?」
「まさかジムリーダーになっていたとは」
「えっ」
 ステラが看板に視線を戻した時、背後からヒールを鳴らす音が聞こえた。
「あら、挑戦者かしら?」
 その声に、カグロは振り向く。
「ミオ……」
「誰かと思ったら……カグロじゃない」
「えっこの人が?」
 ステラが問う。
「ああ……四つ年上のいとこ、ミオだ」
「うそーん! めっちゃ美人さんじゃねーか、なんで苦手なんだよー」
「バカ」
 カグロは一歩前進しようとするステラを制した。ミオはゆるく微笑む。
「へぇ、苦手……ねぇ」
「ああ……正直、苦手だ」
「ちょっと女の子の服を着せてあげただけで、……ねぇ、ヤエ?」
 ステラが笑いをこらえる中、ヤエと呼ばれた女性はミオの背後から顔を出した。
 燃え盛る炎のような髪を束ねておだんごにし、大きな藍色のリボンをつけていた。
「……わ、私」
「あれ? そういえばヤエって名前、どこかで」
 ステラが言った時、ヤエはまた顔をひっこめた。
「えっなんかオイラ悪いこと言った?」
 ステラが戸惑っていると、ミオが一歩ステラに近づいて言った。
「……あなた、カグロの友達? 名前は」
「ステラ。カグロとは昔なじみで」
「へぇ、昔なじみなのに、カグロったらそういうのなにも話してくれないものね……知らなかったわ」
「兄弟ならまだしも、いとことなれば連絡も減るだろ」
「あなた一人っ子じゃない。ステラくん……ね。となると、あなたたち二人はサクハフロンティアのブレーンに決まった子たち……そうでしょ?」
「はい」
 ステラは頷いた。 「ですってよ、ヤエ。私たちでお相手してあげましょうか?」
「いや、試合をする気はない。ただ、頼みが」
「そうなの、久しぶりに会ったのにつまらないわね。じゃあ、私もバトルしてくれなきゃあんたの頼み聞いてあげないっと」
 ミオは高い声で言った。
「だから俺は苦手なんだよ……」
「なんかわかった気がするぜ……! で、マルチバトルだよな? オイラまぜろよ?」
「あら、混ざりたい? それならどうぞ。……ヤエ、普通に挑戦者として、迎え撃ってやりましょう」
「……はい」
 挑戦者を相手に試合することならできる。ヤエも瞳に宿る炎を燃やした。
「普通の挑戦者ってことは、ちゃんとしたジム戦で頼むぜ。勝ったらなんかくれよ」
「もちろん」
「ステラだけ盛り上がってんじゃねーのか」
「あら、私も楽しみよ?」
「そうですか……仕方ないな、バトルとなれば」
 カグロは微笑を浮かべる。その表情はミオと似たところがある、とステラは思った。
「どんな形であれ、勝たせてもらう」
「その言葉、そのまま返させていただくわ」
 ミオは怖気づくことなく返した。だが、そんな彼女の言葉にも、カグロはさして動揺せず、むしろこの状況を楽しみはじめているようだった。

 ⇒NEXT