眠らない町の、若者の集う通りの今日のメインイベントは、アコギターのライブであった。
スポットライトが見える人間たちが拍手喝采を送る中、スポットライトが見えない一人の少女は行き場もなく歩いていた。
少女は、ある看板が見えたところで立ち止まった。
“4F clubhouse COSMOpower”
どう見ても若者向けと取れる、宇宙を背景としたロゴマークの下には、“成年・未成年問わず、ポケモン同伴可”と書かれていた。
歴史の研究をしていても疲れはなかった彼女は、そこに入ってみることにした。
少女が入った時、ハウサーのショーケースは既に終わりかけであった。
それから、ぎゅるんと曲が変わり、エレキヴァイオリンの使われたにぎやかな曲に変わる。
舞台に、少女と同い年くらいの少年と、少年のポケモンであろうフローゼルが躍り出た。
激しく動いたと思えば、途中でカチッと鍵がかかる。ロックダンスだ。
様々な色の光が行きかい、ミラーボールもずっと回っている。でも、それらがなくったって、少女にはスポットライトが見てとれた。
――すごい、この人。思わず凝視してしまう。
ショーケースの終わりかけに、彼はフローゼルからバラの造花を受け取った。
そして、少女にフワリと投げ、少女はそれに手を伸ばした。
また、音楽が変わる。それを聴いたブレイカーとポケモンたちが、軽やかに舞台にあがった。
さっきまで踊っていた少年は、少女の隣に座った。
「じっくり見てくれてたよね?」
「えっ……だって、上手かったから」
「でも、“タークミー! フローゼルー!”って叫んでくれてもよかったんだよ?」
「いや、私たち初対面ですから……名前、タクミっていうの?」
「うん。よかったら君の名前も教えてくれない?」
「……アユ」
それから、タクミはアユが握り締めていたバラの花に視線を移した。アユは花を鞄になおす。
「アユは、ダンスするの? ヒップホップとかポップとか……」
「前までガールズポップやってた。今はジャズ」
「ジャズ? いいねー! 男のビタミン! よかったら、バトル出てみない? ショーケースが終わったら、誰でも出られるし」
「まだまだ始めたばっかりだから、バトルはちょっと……」
「そっか。でも、まあ見ていきなよ。君の求めているものがあるかも」
アユは頭に疑問符を浮かべた。それから、タクミは彼女に耳打ちした。
「こんごうだま、さ」