Silent Vanguards - 03


「タクミくん、おいで」
 バトルが終わった後の“COSMO power”に残っていたのは、DJ NEMOLO、ツワルダー、タクミ、そしてアユだった。
「ああ、そこの女の子は……悪いけど、帰ってくれないか」
「ツワルダーさん、大丈夫です。彼女は「同志」ですよ」
 タクミがそう言って、アユを引き寄せた。アユは身体をこわばらせる。
「同志?」
「はい」
 その言葉にはアユが答えた。
「タクミさんとはここで会う約束をしていました。シンオウ史の研究をしているアユです」
 アユは深々とお辞儀し、それから鞄を差し出した。
「この中にしらたまが入っています。……しかし、あなたたちに協力するのは、まず私がこんごうだまを見てからです」
「ほう?」
 DJ NEMOLOがほくそ笑んだ。
「つーちゃん、見せてやりなよ」
「……ああ」
 ツワルダーは一度奥に引っ込み、それを持ってきた。まばゆいばかりの輝きをたたえ……ているわけもないが、こんごうだまはそれでも凄みを持っていた。
「こんごうだまだ」
「ありがとうございます」
 タクミが受け取った。
「……では、私からも」
 アユは鞄のチャックを開く。出てきたのは、つるつるとしたミルクのような宝珠だった。
「シンオウ史の調査をしていた時、偶然見つけました。誰にも話していませんが、おそらくこれはパルキアにつながるものでしょう」
 淡々と答えるアユを前に、二つの宝珠を見比べて男性三人がつばを呑む。
「COSMO power。表向きはクラブハウス、裏の顔は反ギンガ団組織。信用もできると聞いています。私は必ず、ディアルガとパルキアを、かの組織の野望から守ります」
「おっ、頼もしいねえ」
 DJ NEMOLOが言った。
「ところで」
 アユがしらたまをしまって言う。
「なぜダンスバトルなんですか? こんごうだまを持つ者を、そんなもので決めるなんて」
「えっ? そりゃあれさ、楽しいからだよ。はじめから裏の顔を知っている、信頼のおける常連しか参加させてないからね。僕とつーちゃんが誰と共闘するかを決める儀式さ」
「そんなことで……」
「まあ」
 飄々と説明するDJ NEMOLOに呆れつつも、ツワルダーが口を開く。
「結局、「しらたまを持つ少女」と接触しろと頼んでいたタクミが優勝した。見事なダンスだった。つまりは……そういうことだろう」
「八百長?」
「違いますー」
 DJ NEMOLOが口を尖らせた。
「運命、だよ」
 そう言ってのけると、アユは深いため息をついた。
「なんだよー」
「やってけるのかしら」
「お互い宝珠は見せた。アユとしても引き返せないんじゃないかな?」
 タクミが得意げに言った。こういうところも、いかにもなロックダンサーだ。
「……わかってるわよ。よろしく、タクミ、ツワルダーさん、DJ NEMOLOさん」
「ネモロでいいよ」
 かくして、運命というにはあまりにもちっぽけな出来事から、四人の共闘がはじまった。

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