緊急ミッション:バルチャイを保護せよ!


「おかえり!」
 リルむらに帰ってきたユキエを、村民一同が迎えた。
「随分たくましくなったねぇ」
「お父さんとお母さんが、美味しいごはんを作って待ってるよ」
 ユキエは、ひととおり皆に挨拶した後、家を目指した。懐かしいドアの前に立ち、そっと開くと、鈴の音が鳴った。
「ただいま」
「おかえりーっ!」
 真っ先に玄関に来たのは、ユキエの父親だった。彼は、いわゆる「親バカ」の類だが、敢えて外には出ず、家の中で待っていようと、家族に提案していたのだ。
「あなたったら……ご飯できてるわよ」
「お姉ちゃんのために、あたしも手伝ったんだよ!」
 続いて母、妹が顔を出す。

 ご馳走を食べながら、ユキエは今までのことを色々と話してきかせた。
「へぇー、イノチがけにボイルランド! 大変なところに行ったものねぇ」
「アルミアのお城には行ったのか?」
「ううん。そこはほら、ベテランのレンジャーが行くところだから……」
「じゃぁまだまだキャリアを積まねばならんってこった!」
「ナズワタリでは、北の寒いところまで行くもん!」
 そんな時間も飛ぶようにすぎて、晩にユキエはぐっすりと眠れた。

 翌朝、家を出たユキエは、スタイラーに手をかけた。
「もしもし、シンバラ教授ですか? ユキエです。連絡が遅くなってしまってすみません。無事ナズワタリ地方まで帰ることができて、昨日は家族四人で過ごしました」
「そうか、それはよかった。そこで、今後の活動についてなんだが……」
「はい?」
「ナズワタリのレンジャーとしては新人、ということで、一度ユキエがアルミアで培ったレンジャーランクを剥奪ということに」
「えっ……えーっ!?」
 ユキエは動揺した。レンジャーランクは、高ければ高いほど難しいミッションを受けることができる。剥奪されてしまうと、初心者が受けるようなミッションしか受けられなくなるのだ。
「すまん、先に伝えておくべきであった! ただし、ナズワタリはそのような例外が認められるほどに地形が入り組み、気象条件も厳しいということでもある」
「そ、そうですか……」
 せっかくランクを上げていたのに、と少しつまらない気持ちになりながらも、ユキエはナズワタリに例外が認められる理由は身に染みてわかっていた。
「お、そうだ。あいつ……カンタには会ったか?」
「カンタ? ……ああ、ふわふわした茶髪の男の子ですね? 会いましたよ」
 それはちょうど昨日の出来事だった。ボムボム団とかボマーズとか名乗る連中から、バルチャイとワシボンを守る、その時に助けてくれた男の子だ。
「そうだ、そいつだ。彼もちょうどナズワタリに転属して、お前と同じようにランクを剥奪された。同期として顔合わせが増えるだろう」
「そうだろうと思っていました。彼、話しやすいですし、やっていけそうです」
「よかった。それじゃあ、まずナガタウンのレンジャーベースに向かってくれ。そこのリーダー、ルーポにはユキエのことを伝えておいたし、カンタもいるだろう」
「ラジャー!」