Episode 6 -大樹と森の番人-


 暖かい空間に気づいたステラを、二つの目が迎えた。
「ひぃっ!」
「そんなに早く動いて大丈夫か?」
 鼓動を抑える。その目はヨルノズクであった。
 話しかけてきた人は、長く髭を生やした老人だ。
「あ、あなたは」
「ここの番人じゃ。森に流れる時間を守っておる」
「時間……」
「ポケモンたちが健やかに過ごせるようにな」
 ステラは、かけられていた布団から出た。目の前で暖炉がうなっている。
「いい家だな」
「それはどうも。お礼は言ったか?」
「え?」
 番人は、ヨルノズクをあごで指した。ヨルノズクは枝にとまる。
「あいつがお前を見つけたんだよ」
「そうだったのか……ありがとな、ヨルノズク」
「ホー」
 ヨルノズクは、ひとつ瞬きした。

 ヨルノズクのとまった枝の後ろには、ロトがいた。
「ロト! お前、大丈夫だったんだな!」
「トック!」
 ロトは、ステラに木の実を渡した。
「……え。くれるのか?」
 ステラは、木の実と木を見比べる。ヨルノズクがとまっている木になっている実と同じものだ。
「これは?」
「“思い出の実”。少なくとも、お前の相棒はこれを食べて何かを思い出した」
 黄金に輝く、星に似た木の実。
 食べると思い出がよみがえる……とは到底思えないが、見た目は不思議な力を感じさせる。
 ステラは少しかじって、その味のよさにすぐかぶりついて一気に飲み込んだ。
「……違う」
「トク?」
「オイラが昔会ったニュートラルポケモンは、ルギアじゃない」
「トーッ!?」
 ロトは目を見開いた。番人もその言葉に反応する。
「じゃあどのポケモンなんだって言われても、応えられないけど……急にそう思った。木の実効果?」
「お前、ニュートラルポケモンと言ったな?」
「……はい」
「この森にもいる。じきに会える、かもしれないぞ」
「……?」

 ステラは、番人の家を改めて見渡した。
 杖、時計、いたるところに、ホーホーの絵があしらわれている。ヨルノズクの昔の姿だろうか。
 それから、身支度をして、そろそろ行きます、と言った。
「もう行くのか」
「はい。会いたい仲間もいるので。謝らなければならない仲間が」
「そうか。仲間を大切にな」
「はい」

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