読みたい本について検索をかけた結果、ほとんどはこの図書館に所蔵されているとわかった。エデルは早速カードを発行してもらって、目当ての本数冊を借りた。
 観葉植物が植えられた窓際にはソファが並び、大人から子供までじっくり本を読んでいる。なかなかきれいな場所で気に入ったので、エデルは少し周ってみることにした。
 “ポケモンの本”。どうやら子供向けのコーナーのようで、小さな子供たちがピカチュウだトゲピーだと騒ぎ、母らしき人に注意されている。
 その裏もポケモンの本が並んでいたが、そちらは大人向けだった。エデルが借りた、人とポケモンの絆についての論文集とは違い、大衆向けの本がほとんどだ。主に扱われるポケモンの名前で、あいうえお順に並んでいる。
 それも、かなり膨大だ。本棚はかなり奥まで続いており、エデルは背表紙を見ながら歩いた。
 ふと、柔らかいものにぶちあたった。エデルが正面を向くと、月当たりを背に立ったミミロップがいた。
「あら、すみませんでした」
「ミュウ?」
 ミミロップは、また本棚を見る。ちょうど「ま」行のあたりだ。
「なにかを探していらっしゃって?」
「ミュウ」
 ミミロップはうなずいた。
「……ミミロップの本は、えーと……このあたりですわね」
「ミュウ!」
 ミミロップは喜ぶ。どうやら、自分と同じミミロップが主人公の話を探していたらしい。
「これなんかどうですか? “ミミロップ民話集”」
「ミュ、ミュウ!」
「面白そうですよね。わたくしと一緒に読んでみませんこと?」
「ミュウ!」
 ミミロップがそう返事すると、エデルは本に手を伸ばす。だが、身長が足りず、その本には背伸びしても届かなかった。
「あら、困りましたわね……誰か、係員の方をお呼びしないと」
「……お客様、お目当ての本はこちらですか?」
 後ろから女性の声が聞こえた。女性の腕はエデルの頭上を越え、その本に伸びた。
「はい、そちらです! ありがとうございま……」
 エデルは最後まで言うことができなかった。その女性は、なにも言わず留学してしまったシオンの姉――アスターだったのだ。
「あ、あっ、アスターさ、こちらに……とにかく、ありがとうございました!」
 エデルは、取ってもらった本を持ったまま慌てて立ち去る。ミミロップが残念そうな表情を浮かべる。
「どしたの、ミミロップ」
「ミュウ……」
 ミミロップは、本をぱらぱらめくる動作をした。
「あれ、一緒に読もうって?」
 ミミロップは黙ってうなずく。
「………ふーん」

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