最強チームとなりえるか
※公式キャラクター(サブウェイマスターの二人)が登場します。
広くなったフィールドに、ゲンガーとアーケオスが対峙する。
トレーナーたちも汗をにじませる。よく育てられたアーケオスとゲンガーは、素早さが全く同じになるのだ。
どちらが先か、これからは運勝負だ。
「“岩なだれ”だよ!」
「“鬼火”です!」
アーケオスは岩を打ち上げ、ゲンガーは炎を忍ばせた。
先に攻撃を決めたのは、アーケオスであった。ゲンガーはうめき声をあげる。
「おぼろちゃん……! それでも、しっかりアーケオスをやけど状態にしましたね」
技を決めた後のアーケオスはやけどに苦しんでいた。
「と、いうことはこれからの攻撃は、この“いわなだれ”以上のダメージは受けないということです」
ゲンガーのおぼろは見かけによらず臆病である。攻撃がワンテンポ遅れたのもそれがあったのかもしれないが、シオンのその言葉で自信をつける。落ち着いて戦えそうだ。
「まだまだいきますよ、おぼろちゃん、“十万ボルト”!」
ゲンガーの電気技をくらい、これは倒せたのではないか、とカグロは思っていたが、アーケオスは“オボンの実”を食べていた。
「弱気になっちゃ困るからね、事故の対策はしっかりしてるよ! “岩なだれ”!」
アーケオスは元気いっぱいその技を放つが、やはりやけどになっているとダメージは半分ですむ。
次のターンはどう来るか、先攻か、後攻か。
お互い、最後の一発で倒れてしまうところだろう。
「時間稼ぎはみっともないですよ」
ふと、ノボリが言う。アーケオスには、“守る”という選択肢もあるのだ。
「わかってるよ!」
クダリは車掌帽の下からのぞく色の薄い瞳を輝かせて言った。
「おぼろちゃん、最大パワーで“十万ボルト”!」
「アーケオス、やけどに負けるな“岩なだれ”!」
岩が起こす砂塵とトレーナーまで襲い来る電磁波に、そのバトルの行方を見届けられる者は誰一人いなかった。
攻撃が終わった後、立っていたのはゲンガー……シオンのおぼろであった。
「やっ」
やや弱々しく立つおぼろは、シオンとカグロのほうを振り向き、不器用なウインクをしてみせた。
「やりましたわー!」
シオンはゲンガーにつまづきそうになりながらも抱きついた。
「あ、カグロさんも……おぼろちゃん、ぽよぽよですよ」
「……じゃあ、遠慮なく」
「あーあ、負けちゃった。二人ともより強くなったね。マルチの調子のままじゃ勝てると思ってたのにー」
その端で、クダリは面白くなさそうに二人と一匹を見る。ノボリはぽんとクダリの肩に手を置いた。
「いつだって油断は大敵ですよ」
「そうだね」
「それでは……ブラボー! 心の底からこの言葉を送りたいです! 本当に魅せられるような試合でしたよ、わたくしのバトルへの探究心により火がつけられました」
「それは私たちだって同じです」
「俺もだ」
「僕もー!」
「ポケモンバトルに終わりはない、わたくしはそう思っています……と、こう言ったところで、あなたがただってそう思っているでしょう。ここにいる四人も、最後までしっかり戦ってくれた八匹も、それから他のポケモンたちも、飽くなき強さへの道を突っ走っていくことでしょう! そして、また戦えるとわたくしどもはとても嬉しいです」
ノボリの言葉に、その場のトレーナー全員が自分のモンスターボールを見た。カグロとシオンは勝利への切符をつかんでくれたフリージオ、ぬまぞう、キノガッサ、おぼろのことを思うと同時に、他の周回で使ったポケモンたちの勇姿も思い返した。
「あの、私、足手まといじゃありませんでしたか? それが心配で」
ギアステーションに戻るなりシオンが言った言葉がそれだった。
「なにが心配だ、全くそんなことはなかった上に、最後のバトルで場に残ったのは俺のポケモンじゃなくて、シオンのおぼろだった。誇っていいことだぞ」
「……ありがとうございます! それで、カグロさんはこれからどうされるんですか?」
「俺は……これでサブウェイのスーパートレインも制覇だ、もうここに用はない。あとは同じくサブウェイを突破したトレーナーたちと戦ったほうが勉強になるしな」
「そうですか……」
カグロは鞄から、カドがきちんと揃えて折られたビラを出した。
「これ。街中で見たか?」
「……はい!」
シオンも同じビラを取り出す。
「数年後だ、強者の祭典――ワールドトーナメントの開幕。これに出られるトレーナーはほんの一握りだ。……俺はこのスタジアムに立つことを目指すが」
シオンはビラを見直す。現在建設予定、竣工の半年後に開幕予定、と書かれている。そこにはリザードンやガブリアスなど、人気ポケモンの写真も載っていた。
「私も、目指します!」
シオンが目を輝かせて言った。カグロも目をギラギラさせる。
「じゃあ、次に会うのはその場所だな」
ようやく書きあげました……!
電車にスペック満載だったり、ダメージ計算がおかしかったりしますが……ひとまず、燃え尽きました。
120616