スミストのはじまり -in Sakha-


 その日、ヒウメシティのサクハ地方ポケモン協会本部に呼ばれたのは、ライラックとオモトーだけであった。
 ロビーの柔らかいソファに腰掛けたライラックは、道中でチャービルに見つからなくてよかった、と小さくため息をついた。
 二人は一席分間を空けていた。意味もなく元気な後輩組もいないと、話しかけるタイミングが掴みづらい。

「大統一時代前から残ってるのって、私たち二人だけなのよね……」
「ああ……そうだな。あの頃はライラックが一番下だったな」
「そうなのよね。それで、まあ色々あって、ほとんどのジムリーダーが入れ替わったじゃない? 今はシャクナやユッカの相手するのは楽しいけど、ほんとはもう少し後輩でいたかったなー、なんて」
「そうか。確かにな。……それなら、四天王でも目指してみたらどうだ? 四天王はジムリーダー以上に実力本位、長く後輩でいられるぞ」
「何よそれ!」
 ようやく話も進みそうになった――というところで、見慣れた壮年の姿が見えた。
「やぁ、待たせたね!」
「会長」
 テンガロンハットのモミアゲ……と、ライラックは密かに呼んでいた。今日もそのあだ名どおりの姿であったサクハ地方ポケモン協会会長は、喜びの声をあげた。

「祝! サクハ地方、多地方との連合結成―!」
「は」
「ほう」
 連合など、近くのリーユエやナズワタリとはとっくに組んでいて、それも長い付き合いだ。新しく連合を結成したからといって、そんなに喜ぶようなことがあるのだろうか。
「なんだよ、オモトーはともかく、ライラックはどうも肩透かしをくらったみたいですなぁ。今度は近所じゃなくて、もっと遠いところ! これでサクハ地方ポケモンリーグは世界規模で挑戦者が集まるようになる」
 それから、会長は連合加盟地方を挙げていった。
 雲に覆われたサクボウ地方。北西のミンカイ地方。西にある温暖なイベル地方。そして、東の大洋に浮かぶセイカイ、トウカイ地方だ。
「はい、これが地図で、サクボウはここで、ミンカイはここな。……連合参加地方を線で結べば、まさしく世界一周! だ」
「なるほどなぁ。私はイベル地方とミンカイ地方なら知っとる。ライラックは……」
「私もミンカイは知ってるわ。サクボウってちょっと気になるわね……あと、セイカイ、トウカイって、あの東西地方よね? 実在したのね……」
「ああ、そう言われたらそうだな」
「どの地方も、将来を期待されている。サクハからは、リンドウ空港より各地方へ直行便を出し、トレーナーの行き来もしやすくする。ポケモンリーグ本社以外に、もっとバトルを極める者たちの施設……バトルフロンティアも造る。ただ、このへんは予算の関係で、協会側は建設だけ手伝ってあとはオーナーを募集して委託する。で、いずれは全地方で対抗戦をしてみたいものだと、会議ではそのあたりまで」
「すごいじゃない! じゃあまず、私は各地方の毒タイプのエキスパートとお近づきになるところからね……。他のみんなにはいつ教えるのよ?」
「まあ、色々決まってからだな。連合の名前も決まっていないし。チャンピオン、それからホウセン、ノーラにはもう知らせてある。次知らせるとしたらリンドとトギリだな。慎重にいけばだが」
「私たちは二番目ってわけね……」
「当たり前だ」
 イベントごとが好きなライラックは、はじめとはうってかわってどきどきを隠せなくなり、発展が著しいホウソノシティに住むオモトーもなかなか楽しみにしているようだった。

 後日、連合の名前も決まり、会長は満面の笑顔でチャンピオン、四天王、ジムリーダーたちに手紙を送った。

 “SMISST連合――スミスト、本日より発足!”


リーユエ、サクボウ、ミンカイ、イベル、東西の地方名お借りしました!
サクハにとっても大きな出来事だったので、事実としてSSにまとめさせていただきました。

こうやって書いてみると、スミストはポケモンに特化した連合なのかなー? と思いました。
リーユエナズワタリとの同盟は特にポケモン中心というわけでもなく、なんていうかEU的です。笑

120329