SMISST対抗戦メモ - 03
スタジアムは、客席ごとすごい熱気に包まれている。
ついこの前ポケモンを始めたあたしには、まだ理解できないところもあるけど。
この祭典の今年の開催地は、WICアレス諸島とわりと近場で、交通費無料というサービス精神旺盛なバイトを見つけてしまったため、来てみたということだ。
「アイスキャンディーいかがですかー!」
熱気に負けじと、声を張り上げる。
暑いから、結構売れるらしい。私の番になってからは、まだ売れてないけど……。
「それ、みっつ」
……と思ったら、記念すべき一人目。いきなり三本……ポケモンかお連れさんの分、かな?
「どうぞー」
あたしは、その女の人――なんていうか、寒そうな服装をしたグラマーな人――に、アイスキャンディーを渡した。
売れたからか、まかおもご機嫌。
「マッカッカー!」
「あっ、こら、まかおっ!」
まかおは、その人の膝に乗った。
「あらあら、元気やねー。まかおって、きみのダルマッカ?」
「そうですけど……ごめんなさい! まかお、降りといで」
「え、いーよぉ! ねーまかおちゃんっ」
「マカカァー!」
……なんか、あたしと一緒にいる時よりも楽しそう……ひょっとして、あたしよりナイスバディーだから!? それはないと信じたい。
「やっぱり、ポケモン好きなんですよねっ」
「あったりまえじゃん。きみは見たところ、まだ新米だにぇ? ポケモンとは色々な付き合い方があるから、まかおちゃんと一緒に、ちょっとずつ進んでいけばいいと思うよ!」
なんか、大人だなぁ。
「ありがとうございます! じゃあ、あたしはまだ売らなきゃいけないので……まかお、行くよ」
「あ、待って待ってー! よかったら名前ー」
「えっ、サ、サイコです! あなたは……」
「ん、ミストレイ!」
彼女の名前を覚えて、あたしは階段をのぼり始めた。
なつっこい人だったなぁ。友達もいっぱいできたし、バイトに応募してよかった!
ただ……ミストレイさんは、あたしよりグラマラスだった。……ぎり……ぎりぎりぎりぎり……。
おっと、接客する表情ではない。あたしはすぐに笑顔に戻った。
エクレールさん宅、ミストレイさんお借りしました! ありふれた出会いのおはなし。