SSS集


☆めあさん宅コメットちゃんとネモロ(+ツワルダー)

「宇宙人?」
「そーそー、失礼しちゃうよ。みんなして……あなたは言わないの?」
「んー、僕もよくずれてるって言われるからねー。でもさ」
 ネモロは夜空を見上げて言う。トバリシティの真ん中では、光が邪魔をして、星なんてせいぜい一等星が数個輝いて見える程度である。
「宇宙から来たポケモンとかいるじゃん。それ考えると、人間たちの中に何人か宇宙人が混じっててもおかしくないよねー」
 言いながら、ネモロはオーナーのポケモンを思い出す。あのピクシーは、トバリ東部の隕石地帯で見つけた、まさに宇宙からきたポケモンだった――とか言っていた。
「そう言われたらそうなのかも?」
 同じような雰囲気を持つ青年の言葉に、どこか納得してしまった少女コメットの瞳は、トバリの夜空のその向こう、輝く銀河と、同じ色。


☆めあさん宅セシルくんとタム(+ガキども)

「いらっしゃいませ、お坊ちゃん」
「えー、なにそれ、わざとらしい」
 パーツショップに最近よく来るようになったセシルという少年は、人を小馬鹿にしたような喋り方をしており、それはオーナーのタムへも例外ではなかった。
「んで? パーツは入荷したの。それさえあれば僕はゲームの修理できるんだからさ、自力で、ね」
「はいはーい、お坊ちゃん、こちらになりまーす」
 タムは頼まれていたパーツを出す。精密に折り曲げられた金属のそれは、ゲームハードのメーカーに注文しないと手に入らない。
「タムさん、よくできましたーっと。はい、これで用済み」
 セシルが店を出ようとしたその時、いつも後ろについてくるマッギョが、タムの子供たちと遊んでいるのが目に入った。
「ちょ、マッギョさま」
「セシルさんいらっしゃーい。俺マッギョさまいじれるから超嬉しいんだよねー」
 そう言ったのは長男のティムであった。何も言わないセシルの肩に、タムはそっと手を置く。
「ダウンタウンには大きな家電量販店もあるのに、なんで君はこんな小さな店に来てくれるんだい?」
「っなんでもいいでしょ、帰るよ、マッギョさま」
 タムの手を振り払い、店を出ようとするが、えー、と子供たちから抗議の声がもれる。やれやれ、と思いつつも、セシルは内心その雰囲気を楽しんでいた。


☆黄泉さん宅エマさんとヒヨ

「その星の髪飾り可愛いね」  そこを褒められるとは。思わず、ヒヨは戸惑った。芸術の町ミナモに生まれ、さらにカメラまで持ち歩いているエマは、こういうことによく気づくのかもしれない。
「えっ、ありがとうございます」
「いつもそれなのか? たまにはお花とかにしてみんか?」
 ねえキノガッサ、とエマが言えば、キノガッサはオレンの花を一輪、ヒヨに差し出す。
「わぁ……」
「ホウエンっていろんなお花が咲いてていいよね。ボクも草タイプのポケモンをいっぱい育てててよかったなって思うのだ」
「そうか、草タイプ……。あ、お花もうひとつもらえますか? 私二か所でくくってるので」
 その花が気に入ったらしいヒヨが言う。隣でマッスグマもおねだりすると、キノガッサはさっと茂みに入り込み、オレンの花とモモンの花を摘んできた。
「マッスグマにはモモンの花、ね。ええのー、似合うんじゃない?」
「えへ、マッスグマ、似合うって」
「マァー!」
 ヒヨも笑顔になり、もらったオレンの花を髪にさしながら、改めてエマに感謝する。
「いいのいいの、だって、ヒヨちゃんもマッスグマちゃんも、かわいいいいいいいいいから……」
 そして、溢れる笑みを殺したような表情になる。こういうところはどうにもならないのだろうか、とヒヨはひそかに思った。


☆輝兎さん宅ララくんとメグ

「ハハッ、メグじゃないかー! 奇遇だね」
「うわ出た、変態なほうのエリトレ……」
 その笑い方からしてすぐにララだとわかり、メグはあからさまに嫌そうな顔をする。だがこれも挨拶だ。
「それにここで会って奇遇もなにもあるの? ここはビッグスタジアムの前、私が一番いそうなところだけど?」
「ううっそうか……ま、せっかくだし、バトルしてくれよ! 俺のバルジーナがバトルしたくてうずうずしてんだよ」
 おーいバルジーナー、とララは空に向かって呼ぶ。バルジーナは一瞬で降りてきた。確かにうずうずしているという様子である。
「へぇーそう……ぼっさん、どう?」
 メグは隣にいたママンボウのぼっさんに訊く。ぼっさんは肯定の意をこめ、不敵な笑みを見せた。
「いいじゃない。バルジーナとママンボウ、女の子同士のバトルよ!」
「やりぃー! さ、バルジーナ、“エアスラ……」
「待って待って気が早すぎ! ここは町中なんだから、スタジアムに入ってからにしないと」
「あーそうだった! エリートトレーナーたるもの、そういうものは守らねば!」
 メグはその言葉にあえて突っ込みは入れず、二人と二匹でビッグスタジアムへのワープパネルに乗った。


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