赤いライトアップ


 家の外からがさごそ音が聞こえるが、それがパーツの宅配でないことはタムにはすぐにわかった。
「お前らー……」
 カーテンをじゃっと開け、タムにとっては予想の範囲内であるその光景を見て、呆れ顔で言う。こういうことを想定して、家族でのパーティは昨日済ませておいたのだ。
 スポトリの三人(スポーツが好きな女の子三人組ということらしいが、彼女らは「トリオ」でなく「トリニティ」であることを強調している)が、パーツショップ玄関のライトアップに、なにやら細工している。
 三人のうちの一人、ツユクサの相棒であるバオップの炎によって、はっきりと見えるが、本人たちも、それぞれの個性を生かしたサンタの格好をしていた。
 タムの視線にはじめて気が付いたのは、赤髪の少女ツユクサだった。
「だってさー、聞いてよ、今日ウォーリアーズが勝ったんだよー!」
「おめでたいよねー」
 心から嬉しそうなツユクサの言葉に、一緒にいたキクノも続ける。
 そんな中、ゴチルゼルのごっさんにも手伝ってもらい、一足先に細工を終えたらしい少女メグは、店内にドタドタ入ってきて、俺の相棒ディーボに話しかける。
「ディーボ、ダルマッカウォーリアーズが勝ったんだよ! ディーボはヒヒダルマだから嬉しいよねっ」
「ヒヒッ」
 ヒヒダルマは笑う。ツユクサとキクノも細工が終わったらしく、タムを手招きした。
「ほら見てよー、ヒヒダルマもつけちゃったよ」
「えーなになに? 私にも見せてー」
 タムの妻であるキャリーや子供たちが、なにやら一階で楽しいことが起きているとわかり階段を下りてくる。そして、玄関に飾られたヒヒダルマとダルマッカ二匹のライトアップを見て、感嘆の声をあげた。
「すごーい! これ、作ったの?」
「もちろん。ワイヤー作って、そこにライトを巻きつけたんだよー」
 ツユクサが得意気に説明する。子供たちは近くで凝視し、目をちかちかさせた。
「よかったら撮影しましょうかそこの夫婦ぅ! ファミリーでもいいよ」
 キクノが言うと、キャリーは目を輝かせる。子供たちもポーズを考え出す。やれやれ、と思いつつ、タムは無数のライトに照らされた玄関に立った。
 キャリーからカメラを借り、キクノが写真を撮る。次は君たちも撮ってあげよう、とタムがカメラを持った時だった。
「おーい、お菓子買ってきたよー! って、え、写真? 待って俺も混ぜて」
 スポトリの三人とよく行動を共にしているアキヨシが市街地からやって来る。彼はオドシシの着ぐるみを着ていて、その姿にパーツショップの家族は思いっきり笑った。
「あっはっはー、三人のかしましサンタと、買い出しのトナカイってわけね」
 キャリーが腹を抱えて言う。
「もうね、オドシシコスするだけで、こんなかわいいサンタたちをいくらでも見られるなら、本望ですねー。いやー、ツユちゃんもメグちゃんも可愛くて、俺ほんと幸せも」
 アキヨシはきりっとした表情で言うが、言い終わらぬうちにキクノが頬にビンタした。

 タムが四人とポケモンたちの集合写真を撮り、一行は店内に戻った。
「ミニスカのツユちゃん、ポンチョのメグちゃん、ショーパンへそ出しのキクちゃん……みんな個性出てていいわねー」
「ですよねー! サンタ服ってほんと可愛いし、ポケモン用の帽子もまだまだいっぱいあるし……そうだ、きみたちもかぶればいいよ、みんなでサンタしよう」
 ツユクサは、三人の子供ティム、ビル、ベスに帽子を渡す。
「わーいさんたさーん!」
「えへへーおそろいで赤色してても許されるこんな日……サンタの服が赤くてほんとよかった!」
 赤色が大好きなツユクサにとって、サンタ帽をかぶった子供たちを見るだけで幸せな気持ちになれた。
「ってことは、私たちみーんな、アキヨシになんでも言えるってことだよね」
 メグがにやりと笑う。笑い声がどっと、小さなパーツショップに響いた。


 青氷さん作のツユクサちゃんキクノちゃんアキヨシくん、69さん作のキャリーさんお借りしました。
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