(こういう経緯で一家はバトルに発展する)


 いつもより帰宅が遅れたかと思えば、キャリーはおしゃれな紙袋を持っていた。
「見てー! 野球勝っておめでたいからケーキ買ってきちゃったー」
「さすが母ちゃんだぜ!」
 真っ先に反応したティムが紙袋を覗き込む。キャリーはそれをテーブルに置き、ケーキを出した。
「さーて切り分け切り分けー」
「おいキャリー、そういうのは俺に」
 タムの言葉をよそに、キャリーはナイフを手に取る。
 切り分ける様子を、タムははらはらしながら見守っていたが、予想していた事態はいかにも簡単に現実となってしまった。
「あはー、大きさ間違えちゃった」
「だからそういうのは俺にって……」
「オレこれがいいー!」
 ティムが一番大きなものを指差した。
「待て、オレもこれがいい」
 ビルがティムの腕を制する。
「ベスもー! ベスもー!」
 ベスは思いっきり手を上げて、兄たちのすそをつかむ。
「こら、喧嘩しないの。……って言いたいところだけど、今日はうんと甘いもの食べたいなー、なんて」
「キャリー、なぜ俺を見る」
「タムも疲れてるでしょ?」
 キャリーはタムの肩に手を置き、ウインクする。
「……ああ、こうなった以上、ゆずる気はない。……ディーボ!」
 ヒヒダルマのディーボは、子供たちからタムに視線を移し、ウヒヒッと笑った。
「なにがおかしい」
「おかしいでしょ、大人たちまで本気で」
 キャリーもモンスターボールを出し、スイッチを軽く押してサイズを一段階大きくした。
「ギャラドス、よろしくねっ」
 そのボールから、そっとポケモンを出す。家の中だから控えめにね、とキャリーは付け足すが、ギャラドスの目は燃えていた。
「うわーディーボにギャラドスだー! 倒せーポリゴンZー!」
「ポリゴン2、ケーキがかかってるから頼む」
「イーブイちゃん、勝ったら一緒にケーキ食べようね!」
 大きなケーキのためだけに、役者が揃う。五人と五匹が向き合った時、タムはそっと後ずさった。
(ケーキよけとかないと……ボロボロになっちまう)


69さん宅のキャサリンさんお借り! 子供についてはまたまとめたいです

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