おしゃれ眼鏡と生意気な年下ギャル


「おめでとう!」
 彼女できたんだってね。
発したのは祝いの言葉なのに、バンドのボーカル――エルトロは、ニヤニヤ笑っていた。
「なんか言葉と表情が一致してないんだけど」
「そりゃそうよー。もう別れないであげてよね!」
 そう言われて怯むのはタムのほうだ。今まで、女の子に告白されては試しに付き合ってみて、向こうが飽きたら別れを切り出され、という交際を続けてきた。
 だが、今なら言える。
「もう別れないさ」
「えっ」
 エルトロは赤茶色の瞳を見る。伊達眼鏡の向こう側で見える表情はいつになく真剣だった。
「へえ、あつあつみたいね、よかった」
 そこで会話は一度切れたが、エルトロにはどうにも面白いらしく、吹き出しそうになるのを口に手を押さえてこらえる。
「お前こそ」
 エルトロが振り向く。
「あのパッとしない新しい彼氏はどうなんだよ」
 パッとしないやつ、と、少なくともタムには思えた(同時に自分が言えることかとも思ったが)。バトルは強いらしいが、見た目はぱっとしない。エルトロが彼のような人と交際するとは、正直タムには意外だった。
「うっさい! そういうのは眼鏡を取ってから言え!」
 エルトロはぱっとタムの眼鏡を取り、サザンドラのトゥバンに投げる。
「おい返せよ」
「やっぱ伊達眼鏡だけあってデザインはおっしゃれねー、トゥバンお似合いじゃない! これトゥバンの眼鏡にしようよ」
「やらん!」
 そのやりとりを一部始終見て、自嘲気味にため息をついたのは、少し遅れてたまり場に着いたシャコバだった。


草菜さん宅エルトロさん、あと出てきませんが69さん宅キャリーさん、もちこさん宅カンザキさんお借り。

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