一緒にいたい


「じゃあ、次は僕が」
 テンマの話を一通り聞いたセージが口を開いた。
「テンマが入ってからは一度もないけど、この団は本来、人の入れ替わりが激しいんだ」
 テンマは首を傾げた。スターのカミーリア、看板のマツリとセージ。この三人はファンでなくても知っているくらい有名だ。それに、ずっと前から団に所属している。入れ替わりが激しいと言われても、いまいちぴんとこないものがあった。
「練習がきついだの言って、イントロにも出られないままやめていく。どうせすぐやめるからって理由で、マツリや僕がそいつをこき使う。案の定、そいつはやめる。ボタンもテンマも、本当にここまで続いたっていうのは驚いたよ。きっとマツリもそう思ってる」
「……」
 事実を聞かされ、テンマは言葉を失う。だが、実際問題練習は激しいし、買出しや掃除も大変であるしで、納得はできる。
「次のシリーズで、カミーリア大魔術団に新しいスターが誕生する。団長もそれをわかっていて、来期はあえて裏方にまわることにしたんでしょう。マツリだって、絶対君たちには言わないでしょうが、それを心待ちにしている」
「マツリさんが?」
「もちろん、僕も。僕たち二人は、当時いた先輩たちにこき使われて、それでもやめなかった。僕たちは初めて、何もかもを越えて真の団員としての地位を獲得する年下の団員を見ることになるんです。君たちには、長くここにいてほしい」
「セージさん……」
 テンマは自然と目に涙を浮かべた。ひょっとして、自分は泣き虫なのだろうか。
 そして、立ち上がり、気をつけの姿勢になる。
「ありがとうございます!」
「お礼は本番で、ですよ」

 廊下には、テンマを心配して眠れないでいたボタンがいた。階段を上がってきたテンマを見て、瞳を輝かせる。
「テンマ。大丈夫?」
「ん、何が?」
「何が、って」
 テンマはそのままボタンに歩み寄る。そして、両手を持って言った。
「絶対、絶対成功させようぜ。それで、これからもずっと、カミーリア大魔術団にいよう。スターとして、自他共に認められるように」
「テンマ……」
 ボタンは大きくうなずいた。

 時は経ち、若手二人が主役のシリーズの初演日が訪れた。