二人の初演


 新シリーズの初演日が訪れた。
 場所は、サクハ地方のバトルフロンティア。バトルの聖地ではあるが、まだまだ施設が少ないため、外部から雑技団やオーケストラを呼んで、人を集めているそうだ。
 そこにテントをたてる。普段より小さいものでも、テンマとボタンの二人にとっては、希望のつまったものだった。

「何度も練習した、大丈ぶぅ……」
「テテテンマ、声震えてるるよ」
「ボタンもじゃねーか。しょーがねー、人、人、ごくん……」
 そんなおまじないをしていると、カミーリアが二人の方をぽんと叩いた。
「テンマ、はじめてうちの楽屋に来た時のこと、覚えてる? あの勢いでいけばいいの、あの時からあなたは輝いていたわ。それにボタン、あなた確か、ポケモンバトルは強いんだったわね。その強いポケモンたちが一緒、アクティブにいきなさい」
「は、はいっ」
「わかりました!」
 そう言って、カミーリアは持ち場に行った。
「はー、すげーな。団長の鑑だ……」

 イントロが始まった。まず、はじめはマツリとセージのパート。
 紗幕は閉じたまま、低い打楽器の音をバックに、二人とポケモンたちでアクロバティックなアピール。これでイントロの半分を割いている。いきなり躍動感のあるアピールに、観客はもう釘付けだ。
 そして、曲の雰囲気はがらりと変わり、アップテンポなテクノへ。紗幕もあがり、まずはボタンのパートだ。
 バタフリーとアゲハントのりんぷんで、ボタンは消えたように見せる。アゲハント自身も消え、ボタンの後ろにまわった。
 そして、バタフリーが踊りを見せ、パッとポーズをとると、後ろでもアゲハントに似た衣装を着たボタンがポーズを取った。観客から拍手が起こった。
 音楽に琴の音が追加し、バックライトは青色へ。テンマはツーエイトを大きく使って、ゆっくりとした動きのあと、さっと傘を増やす。得意の和妻、それも入団してさらに磨きがかかった技を見せ、これまた拍手が起こった。
 バタフリーとミツハニーが傘を受け取り、傘を上下逆にしたまま舞台上空へ飛んだ。
 舞台端からマツリとセージが出てきて、四人は舞台中央に向かって片手を差し出した。カミーリアへの、「どうぞ」のポーズだ。
 それを受けて、カミーリア登場。熱狂的なファンは声をあげる。バタフリーとミツハニーは傘をひっくり返し、紙ふぶきで舞台を飾った。
 そしてカミーリアとポケモンたちのアピールが始まり、ラストは皆集まってポーズ。
 観客は盛大な拍手を送った。まだイントロだというのに、やっぱりこの団はすごいんだ、と若手二人は改めて思わされた。

「終わったー」
「終わったねー」
 イントロだけの出演だというのに、二人ともへとへとであった。
「はー。でも、めちゃくちゃ楽しかった! すげーよもう、皆と一つになれた気がする……」
「ねっ、ねっ、ほんとに! もっと出たいって思っちゃった」
「これからも練習だなー。次の本番は明後日か」
 二人の初演は、とりあえず成功。あとからカミーリアに魅せ方などを注意されたが、彼女も成功だと思っているようだった。