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サミナの話を練ろうの会(4)
2018/10/15(Mon)
 ペンタシティの港では人やポケモンたちが思い思いに過ごしていた。
 カラフルな浮き輪が入り口を飾る飲食店を見て、サミナはコアの料理を思い出す。しかし彼ともしばらくお別れなのだと、サミナはヘアピンを指でなぞった。
 ヘキサシティとの違いでまず明白なのは、土地の広さだ。ミタマ本土にはあまり高層ビルがないと聞いていたが、ショッピングモールもオフィスも低層建築で、駐車場も平面のみ。政治の中心、ペンタシティでこれなのだから、他の町もそうなのだろう。
「あの船に乗ってきたの? 面白いポケモン持ってるね」
「えっ、ミノムッチのこと?」
 突然、二十代後半ぐらいのスッとした立ち姿の女性に話しかけられた。ミタマ本土の風習に倣ってサミナがその時ボールから出していたのは、ロゼリア、カエンジシ、そしてミノムッチだ。
「えっと……面白いってどういうことですか?」
「本当に知らないみたいだね。旅を続けていると、きっと驚くべき発見があるよ。きっと君たちを楽しくしてくれる。……それと、うちのスクールは旅人に向けた体験教室もしてるから、エーディア様の思し召しがあればまた会いましょう」
 そう言って彼女が差し出したポケットティッシュには、ペンタシティトレーナーズスクールへの地図が載っていた。

 教室とは言うものの。
 興味を抱いてトレーナーズスクールに来たサミナを待ち構えていたのは、他のトレーナーとの連戦だった。
「ほっ、ほんとに体験しかないじゃーん!」
 なかば涙目になって生徒とのバトルに応じるサミナだが、こんなところで負けるわけにはいかないと心を強く持った。
「カエンジシ、炎のキバー!」
 毒を受けながらもカエンジシは勇敢にも相手のコイルに噛みつき、そのままコイルは空中を漂い、やがて戦闘不能となった。
「タイプ相性、よし。しかしカエンジシも毒状態……毎ターン体力が削られてもう持たないはず」
 おしゃれなフレームの眼鏡をかけた男子生徒が言った。
「……そ、そうだった!」
「焦らないで。こういう場合は、毒消しやモモンの実で毒を癒せる」
 そう言って、生徒の少年は、サミナのカエンジシに毒消しを吹きかけた。
「あと旅するならこれも覚えておいたほうがいい。元気のかけらは田舎のお店でも買える」
 言って、少年はなれた手つきで「元気のかけら」と呼ばれた石のような道具をコイルにかざした。ひんし状態であったのに、またコイルは起き上がり、場を漂う。万全の状態ではないが、気分は良いようだ。
「えっ……ポケモンセンター以外でこんな方法があったの」
「そう。街にいるならポケモンセンターでいいけど、旅するなら用意しておいたほうがいい」

 スクールはこんな具合で、生徒一人に勝つたびに旅のアドバイスをもらえた。全戦を終え、先ほどの女性に再会した時には、サミナにもかなりバトルや旅の知識がついていた。
「来てくれたんだね! 嬉しいよ。それじゃこれ。モールでのポケモンアイテム割引券!」
 何々が何パーセントオフ、と書かれた割引券を見て、サミナは腑に落ちた。この無料体験教室は、ペンタシティのショッピングモールとのコラボ企画だったのだ。
「なるほどねー……。でも、実践経験も知識も増えて、とても楽しかったです」
「良かった。これからの旅路もエーディア様が見守ってくださることを祈っているわ」

 コアの知り合いであるラルクやガリオンに挑むためには、ドーラン山脈と呼ばれる難所を越える必要があった。
 貰った割引券をフルに使って、旅支度を改めて整える。足腰に自信はない。しかし、不安そうなサミナとは裏腹に、ポケモンたちは皆元気そうだ。
「……みんな、もとは自然から来たんだもんね」
 それは人間のサミナとて例外ではない。もっと多くを知り、自身が砂の民の子孫であることに何らかの結論を見出だせるように。また力強く、一歩を踏み出した。



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