+ 第20話 帰還、そして新たな旅立ち +


「リリー!」
 キオの声だ。
「う、ううん……」
「リリー、気がついたのね! ずっと眠ってて、心配したんだから!」
 リリーは、起きてすぐ、キオにしっかり手を握られた。そこは病室であった。自分はずっと、ここで横になっていたようだ。
「ごめんね」
「なんで謝るのさ」
 リリーは、キオに握られている手に何かが入っていることに気がついた。
「ちょっと待って。この手……」
 リリーは、そっと拳をほどいてみた。そこには、光り輝く神秘のしずくがあった。
「わあ、すごい! リリー拾えたんだ。何か手にあるなとは思ったけど、なんとなく広げられなくて」
「神秘のしずくを取ることがもともとの目的だったもんね。でも、あんな目になるとは思わなかったよ」
「そうだよね、リリーずっと倒れてたもんね」
「私はこんな目とは言ってない。あんな目と言ったの」
「へ?」
 いつか、ポケモンワールドでの出来事をキオに話す時が来るのだろうか。

 そういえば、目覚めた時にすぐそばにいたのは、なぜキオだったのか?
 なぜ両親やラッキーのムーではなかったのだろうか?
 それも後にわかることになるだろう。ちなみにリリーの母親の名前は、……ヒイラという。

 翌日、リリーはすぐに退院した。ずっと目覚めなかった少女が何の脈絡もなく目覚めたのだから、看護師も驚いたようだ。
 リリーは、家につくと、すぐ外に出て、全てがはじまったあの山から海を見た。
 ちょうどポケモンワールドと別れた時のようなきれいな夕日であった。あちらからもこの夕日は見えるのだろうか。
「トラウマになったりしないの? 半年間も眠ってたのに」
 リリーは、声がするほうを振り向くと、茂みに、キオが見えた。
「もう晩御飯だって、リリーのおばちゃんが言ってたよ。行こう」
「うん……」
 ほんとうにまた会えるのだろうか。リリーはまたそんなことを考えていた。半年間は、夢のような出来事であったから。

『大丈夫だ。また必ずつれていってあげるから』

 脳裏に、あの声が響いた。これは、間違いなく世界の審判の声だ。
 海を見ても見えない。海は今日も、穏やかなカーテンのように揺れている。
「リリー、はやく」
「あっ……うん!」
 リリーは、勢いよく、街の明かりが広がる場所に下りていった。

ポケダンRUN! 第一部

Fin.