第8話 〜トレジャーフェスティバル〜

 ポケモンワールドのことも、共存世界のことも、まだわからないことがいっぱいだ。
 いつか本当のことを知ることができるように、今は探検を頑張ろう。



「みなさん! 今日はトレジャーフェスティバルなので、お仕事はお休みです♪」
「えっ?」
「なんだーテル、知らないのかよー」
 ドゴーム曰く、年に一度開催される、トレジャータウンをあげてやる祭りのようだ。
 今年一年もたくさんの宝物とめぐりあえますように、と神様にお願いする行事らしい。
「なるほど……おもしろいね」
 テルが言った。

 トレジャータウンに出てみると、祭りの準備はもうはじまっていた。
 準備をしているポケモンたちは汗をかいてしんどそうだが、皆晴れ晴れとした表情をしている。
「手伝いますよ」
 テルたちも手伝った。テルが板を運んでいるとき、誰かが悲鳴をあげた。
「やべーーーっ!忘れてた!」
「どうしたんですか?」
 叫んだのは、銀行をやっているヨマワルだった。
「あ、テル君、ちょうどよかった! ウヒヒヒ! このびんをあげるから、海岸から海水をちょっと取ってきてくれるかな?」
「……わかりました」
「水がとれたら、それをきみの炎であたためて、水を蒸発させてほしいんだ。できるだけ早く」
「あの……それ、何に使うのですか?」
「“神秘の水晶”を清めるのに、塩を使うんだよ。今年はワタクシが塩を作る役だったのに、銀行の仕事で手いっぱいで忘れてしまっていたんだ」
「なるほど。では行ってきます」

 “神秘の水晶”は、トレジャータウンを守る神が宿っているといわれるものだ。
 その水晶に宿る神が、この街の“孫神”なのである。孫神はそれぞれの土地にいて、神様というよりは精霊という方が近いらしい。
 ちなみに、“親神”は、世界をつくった者であって、“子神”は親神にかわって世界を治めていて、<世界の審判>と呼ばれているらしい。
(なるほどねえ、おれ、神様とかよくわからないけど)
「この水をとればいいんだな! よーし」
 テルはそっと海水をとって、中に入った砂やじゃりを丁寧にとった。
「今日も晴れの日でよかった! これならすぐに蒸発するや」
 テルはびんの中の海水を太陽の光にあてて、さらに自分の炎技で加熱した。
 やがて、白くて、さらさらした塩が出てきた。塩は借りていたもうひとつのびんに入れて、また海水を入れて蒸発させた。
 それをくりかえして、塩のびんは塩でいっぱいになった。
「これだけあれば大丈夫だな」

 祭りは、カクレオンやガルーラの出した出店や、エレキブルやラッキーの出し物でもりあがった。
 テルはやきそばを食べて、モモはりんごあめを食べた。
 そして、儀式の時間がやってきた。

 純金製の宝箱から、プクリンがそっと水晶を出した。月の光にあてて、ヨマワルは塩で水晶を清めた。とたんに拍手がおこった。
「トレジャータウン、ばんざぁい!」



 水晶は一晩街の中央に置かれたのち、また宝箱にもどすらしい。プクリンに聞いた。
「でも、神様なんだから、ずっと外に置いたほうがよくない?」
「でも、最近は物騒だからね。残念だけど、宝箱にもどして、神様をお守りしなきゃならないんだよ。ボクたちが神様を守って、神様もボクたちを守ってくれる。助け合うのさ♪」
「そっか……」
 外に置いておくと、すぐに盗まれるらしい。今日はトレジャータウンの住民とギルドのポケモン以外は街に入れないことになっているらしい。夜中には、夜型のポケモンが交代で水晶を守る。
「それじゃ、臨時集会だよ。みんな集合!」
 ぺラップがギルドのメンバーを全員集合させた。
「突然だけど、遠征のメンバーが決まった」
「え?」
 本当に突然のことだった。テルとモモは、心拍数があがっていくことを感じた。
「まずはドゴーム! キマワリ!」
「やった」
「やりましたわー!」
 ドゴームとキマワリは、ベテランらしく、行くのはもう当然のことになっているらしいが、それでも喜んでいた。
「次は……ビッパ」
「えー? あっしがー? 嬉しいでゲスー!」
 ビッパが遠征に行くのははじめてらしい。
「ぺラップぅ、もっとはやく読んでもいいんだよ♪」
「えっ……」
 ぺラップは紙全体を見た。紙の下の方まで、つらつらとギルドメンバー全員の名前が書かれている。
「スガ! ベル! テル! モモ! ヘイガ二! ディア! ダグトリオ! 以上!」
「え? 全員? やったー!」
 ギルドのメンバーは全員で喜びあった。
「で、私たちはどうすれば……」
 ドクローズのリーダー、スカタンクが言った。
「ああ、きみたちはおるすばんだよ♪」
「え? 遠征のお供じゃないんですか?」
「あれ? 言ってなかったっけ。今年は皆で遠征に行きたいから、おるすばんがほしかったんだよ! よろしくね」
「がーん……」

 ギルドのメンバーはさっそく遠征の準備をはじめた。出発は明日の早朝。テルとモモは、わくわくする気持ちをおさえられなかった。