第9話 〜あちらこちらで〜

 ミナモシティの津波災害のニュースは、瞬く間にホウエン地方、そして全国に広まった。
 かなり大きな津波だったため、意識不明数名、重症数名、そして行方不明が数名。
 人々は嘆き悲しんだ。

   どこかの新聞には、小さくこんなことが載っていた。
『救助成功、意識不明の少年』
 ミナモシティ津波災害で、ポケモンレンジャーが海の底から引き上げた少年。
 この少年は、海中では全く反応をしなかったが、海上に出てからは誰にも人工呼吸されずに息を吹き返した。
 現在は意識不明。目覚める可能性は五分五分のようだ。
 少年が海底にいた時間は長いと推測されるが、海上に出て、なぜすぐに自力で呼吸したのかは全く不明である。
「リリーの子供だからよね、テル」
 ジョウト地方、ヨシノシティ。ここはリリーの家のすぐ近くの、リリーの友人キオの家だ。
 リリーは現在行方不明である。リリーの夫、つまりテルの父親は涙をこらえながら仕事を続けている。テルを守るためにも、仕事はしなければならないのだ。
「あなたの見るポケモンワールドはどう?」
 キオはテルのまぶたを見ながら話しかけた。
 ミナモシティの病院は人でいっぱいになったため、テルはキオがひきとった。
「あなたならできるわよ、ポケモンワールドを助けることなんて、わんぱくなあなたなら、たやすい事よね……っ、」
 いつのまにかキオの目に涙がたまっていた。
「だからお願い。リリーを助けて……」



「それじゃ、くじをひいてね♪ ボクは最後でいいから」
「ちょっと待ってください、おやかたさま! 私はおやかたさまと行きますっ!」
「えー?? ぺラップと、つまんなぁい」
「……」
 遠征に行く日の朝、メンバーは夜明けと共に起きて、広間に集合していた。
 遠征先は“のうむのもり”という場所で、ここからはかなり遠いため、まずは3〜4人で協力して森へ向かうのだ。
「えっとおれは……6番だな」
「私、8番」
 テルは6番を、モモは8番をひいた。6番はすでにビッパがひいていたから、テルはビッパと一緒になることは確かだ。
「よろしくでゲス」
「こちらこそ!」
 全員がくじをひいた結果、テルはビッパとベル、モモはグレッグルのスガとディグダのディアとキマワリと一緒に行くことになった。
 テルたちは、“えんがんのいわば”と“ツノやま”を通るルートを選んだ。こう聞くと険しそうだが、距離的にはこれが一番近いのだ。
「みんなに注意しておくけど、ダンジョンにはあまり長くいないようにね! 孫神さまに追い出されちゃうからね」
 これは、おやかたさまにたまに言われる注意だ。ダンジョン内に長くいると、その土地の孫神に追い出されるらしい。実際、長くいたポケモンは『何かが動く気配がした』と言っていた。
「それじゃ、みんながんばるよ!」
「おーっ!!」



「くっそう……あのプクリンめ! なにが『おるすばん』だ!」
「全くでい。アニキに留守番役を命じるとは……」
「アニキ、どうするんです?」
「ハウスキーパーはここのギルドの金で雇えばいい。俺様たちはあいつらを追いかけるのだ!」