『もしもし、ユクシーだけど、エムリット聞こえる?』
『聞こえるけど……どうしたのユクシー? テレパシーで喋るなんて、久しぶりじゃない?』
『いきなりごめん。最近、とても嫌な予感がするからさ』
『嫌な予感……ユクシーはカンが強いから……ユクシーが言うならそうなのかもね』
『本当は“感情ポケモン”であるエムリット……君のほうがカンが強いはずなんだけど』
『私はあまり嫌な予感はしないけど……わかった! それならずっとテレパシーを繋いでおこう』
『ありがとう。何かあったらすぐに連絡してくれ。あとアグノムにもテレパシーを送ろう』
『わかったわ』

第11話 〜探検隊たるもの〜

 テルたちは、山地地帯を縫うように歩いていた。最後の峠を越えたとき、ひときわ大きな山がそびえたった。
「これがツノやま?」
「そのようね」
「なんだか冒険心をそそられるんでゲス」
「そうね。せっかくの遠征だし、楽しまなきゃ」

 “ツノやま”をこえないと、この先に行くことはできない。
 だが、“ツノやま”をこえると、目的地である“のうむのもり”までは目と鼻の先だ。
「すごい坂道が急だね……おれ、さっそく疲れてきたんだけど」
「あっしはまだ平気でゲスよ。山には慣れてるから。ベルは歩かなくていいから楽なんじゃ……」 「体を浮かせるのは大変なのよ……もうちょっとゆっくり登ろうか」
 テルたちは少しペースダウンした。頂上は見えることは見えるが、なかなか近づかない。
 ビッパの言っていたとおり、“ツノやま”はなかなか冒険心をそそられる場所だった。アゲハントやプテラなど、この山に似合うポケモンが生息していた。
 だが、ベルはかなり大変そうだ。ベルはエスパータイプだから、虫タイプの技に弱いのだ。
「“ぎんいろのかぜ”!!」
「きゃー!!」
 アゲハントの“ぎんいろのかぜ”はかなり強力な技だ。遠くのポケモンたちを攻撃することができて、さらに自分の能力があがるのだ。
「ベル、大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ!」
 ベルはそう言ったが、実際はかなりしんどそうだ。虫タイプの技に強いテルでさえ、この攻撃は強力だと思ったのだから。
「でも……がんばらなきゃ!“ねんりき”!」
 ベルは力をふりしぼってアゲハントに“ねんりき”で攻撃した。その後、アゲハントはフラフラしだした。
「……! “こんらん”したでゲス!」
「ベル、すごい!」
 テルは“ひのこ”でアゲハントを攻撃し、アゲハントを倒した。
「テル……やった!」
「ベルのおかげだよ」



 “ツノやま”をこえ、一行はさらに歩いた。まわりには霧がたちこめている。
 その霧の向こうに、プクリンのギルドの旗が見えた。
「おそいよ! ずっと待ってたんだよ」
 もうテルたちのぶんのテントもはってあった。
「もうばんごはんのじかんだよ♪ そのあとは、皆で探検の計画をたてるからね」

 ごはんはいつものとおりおいしかった。食器をかたづけて、会議がはじまった。
「じつはこの森の向こうには……ユクシーという名前の伝説のポケモンがいるんだ」
「え? 伝説のポケモン!?」
「そう♪ そんなポケモンがいるんだから、きっと何かすごいものがあるんだよ」
「きゃーー! さっそく燃えてきましたわー!!」
 ユクシー。どこかで聞いたことがあるような……。とテルもモモも思った。
「ヘイへーイ! オレはそのポケモン知ってるけどよ、ユクシーは出会ったポケモンの……」
「どうしたのへイガ二? 続けて」
「き、記憶を、消すらしい」
 その言葉におどろいて、一部のポケモンがとびあがった。
「な、なんだってー!?」
「だから、すげえものがあるってことは確かなんだが……ちょっと危なくないか?」
「どうしよう……」
 まわりは沈黙した。最初に口を開いたのはプクリンだった。
「どうしようって、探検するしかないよ♪ ここまできちゃったし、探検隊たるもの、勇気がないと」
「明日から探検するよ。おやかたさまもこう言っていることだし。がんばるぞ、おーっ!」
「おっ……おーっ!」