『なぜだ……なぜ……届かないのだ……!』
 どこかでそんな声がした。その声は誰に聞かれることもなく、他のどこかへ落ちていった。



「ひのこっ!」
 テルはブーバーに得意の炎技で攻撃した。だが、ブーバーにはぜんぜんきいていない。
「やっぱダメかあ……」
「バッ、バカじゃないの……」
「モモ、お前は黙っとけ!」
 今この状態でどうすれば良いのか。テルはトレジャーバッグをあけてみた。
(お、ひかりのたまがある! そういえば、さっき拾ったな……確か、部屋を明るくしていろんなものが見えるようになるって効果だったと思うけど……まあいいや、使っちゃえ!)
「ひかりのたま!」
 テルはひかりのたまを使ってあたりを照らした。
「やっぱりあんたバカじゃない? そんなもの使って何の効果に……あっ!」
 ひかりのたまの光は強い。その光で、ブーバーたちの目がくらんだ。
「これはただの目くらまし! この洞窟、すっごく暗いから、ひょっとしたらブーバーたちは光が苦手かなって。よし、いくぞ、“みだれひっかき”!」
 テルはブーバーたちに攻撃にかかった。
 半分以上のブーバーを一気に倒したが、まだ立っているブーバーもいる。テルももうヘトヘトだ。
(もう、ダメかもしれねえ)
「テル、これを!」
 モモは、さっきテルにもらったオレンの実を投げた。実はテルを癒した。
「モモ……これはさっきの! 食べたんじゃなかったのかよ」
「特に役にたたない奴が貴重な実を食べてどうするの! これはテルが食べるべきでしょ」
「そんな、お前は役立たずじゃないよ」
「……。いいから早く攻撃して!」
「あ、そうだった」
 元気を取り戻したテルは、さらに“みだれひっかき”の連発でブーバーを倒した。
「ま、まいりましたー!」

 テルたちはさらに洞窟を進んでいった。モモは天井に、ひかりのたまの発する光とはまた違う光を見つけた。
「これは……出口だ! テル、のぼろう!」
「うん」