第18話 〜辛抱とガラガラ道場〜


「よくここまで来たなぁ」
「水のフロート? さぁ、どこだろうね」
 ルクシオ二匹がせせら笑った。
「ふざけるな! バトルだ!」
 テルとモモは、“エレキ平原”の奥地までたどり着いていた。
「ちょうど二対二! いくぞ! “ひのこ”!」
「それはどうかな?」
 テルの攻撃をかわしたルクシオがそう言うと、レントラーを頭としたルクシオ軍団が岩場から姿を現した。
「返り討ちにしてやれ!」

 気がついた時には、テルとモモは自分たちの部屋に横たわっていた。
「あ、気がついた! よかった、傷も癒えてきたみたい」
 一番最初に視界に入ったのはチリーンだった。
「あ、まだ起き上がらないで。すごいダメージだったから、ギルドに送り返されたのよ」
「そんな」
「ヨノワールさんに聞いたわ。“エレキ平原”に行ってたんですって? あそこはレベルの高いルクシオたちがうじゃうじゃいるから」
「レベルなんて関係ない。おれはあいつらに負けた」
 チリーンは口を閉ざした。
「……くそっ」
 悔しさのあまり、テルは涙をこぼした。モモは歯をくいしばって、泣くのをこらえた。

 しばらくの沈黙が続いて、たいへんだ、たいへんだという声が聞こえた。
「え、<時の歯車>がまた盗まれたぁー?」
 ドゴームがそう言ったおかげで、その速報はテルたちの部屋にも伝わった。
「ひょっとして、おれたちがあの場所に行ったこと、ばれた?」

 次の日の朝、トレジャータウンにいたマリルに、水のフロートを取り返せなかったことを伝えた。
「また行くから」
「急ぎませんよ。もし無理なら」
「また行くから。絶対他の探検隊になんか頼まないで」
 テルはマリルに念押しした。

 また“エレキ平原”に向かうため、準備を整えて、トレジャータウンの出口へ着いた。
 いざ出発、と思った時、テルの足は一歩も動かなくなった。
「テル……」
「……けない」
 聞こえないよ、と言って、モモはテルに近づいた。
「動けないんだ! 震えが止まらなくて」
「テル……でも、正直、私も、怖い」
 テルとモモは、そこで抱き合った。恐怖を共有する。
 その時、何者かがトレジャータウンへ入ってきた。
「さーて、修行もしたし、ガラガラ道場、ふっかーつ! ……どうせ繁盛しないけど」
 ガラガラだ。右手で骨を弄んでいる。
「あ、そこのキミたち! 昔私がここにいた頃に、いなかったね? つまりは、比較的新米! どうだね、うちの道場で修業してかないか?」
「道場?」
「そ! 見なかったかい? トレジャータウンに、そんな建物」
 テルとモモは、そういえばそんなものもあったようなと思い出した。
「……はい、修行したいです」
「モモ?」
「だって、このままじゃ先に進めない」
「……そうだな」
 おれからもお願いしますと、テルは頭を下げた。
「はい、決定! それじゃ、行くとするかね。しゅっぽっぽー♪」