第4話 〜はじめての仕事〜

「ひとーつ! しごとはぜったいさぼらない! ふたーつ! だっそうしたらおしおきだ! みっつー! みんなげんきであかるいギルド!」
「よし! それじゃしごとにかかるよ!」
「おーっ!」
 ギルドのメンバーは、みんなとても元気だ。今は朝の集会が終わったところだ。
「で、おれたちは何の仕事をすればいいのですか?」
「そうだね、それじゃこれでもやってもらおうか」
 ぺラップが、うすっぺらの紙を取り出した。依頼のようだ。
「はい、それじゃ、バネブーからの依頼をこなしてもらうよ。“しめったいわば”で真珠を落としたから、拾ってきてくれ、だって」
「えー?」
 はじめての仕事がこれだ。
「そんなのただのパシリじゃないかー! 落し物を拾ってくるだけ?」
「うるさい! おまえたちに新しい土地を探検できる体力があるとはまだ思えないよ! とっとと行ってきな!」



「な、なんでこんなことに……ここだよね?しめったいわば」
「地図どおりに来たから、おそらくここね」
「で、この地図いったい何なの? ほとんどが雲におおわれていて、何にもわからないじゃん」
 テルが地図を見て言った。地図は、ギルドのあるトレジャータウン周辺のダンジョンしか描かれておらず、まわりは雲の絵でうまっている。
「さあ、私もよくわからない」
 モモはため息をついた。
「とにかく、行こう」
「うん」

「ひ、ひっかく攻撃!」
 ざしゅっ!
 目の前にいたカラナクシは倒れた。
「うーん、攻撃もそろそろ慣れたかな」
「慣れたからといって、関係のないポケモンを攻撃しちゃだめだけどね」
「そうだけど、今のカラナクシは、おれのなけなしのオレンの実を取ろうとしたじゃん」
「だとすると、バトルは成立するわね」
 モモはまた歩き始めた。テルもまたついていった。

「この先はもう行けないみたいだけど……あっ!」
「テル?」
「あそこのリーシャンが持ってるやつじゃないの?」
 テルが指差した方に、美しい真珠を持ったリーシャンがいた。
「あれよー!」
 テルはリーシャンの方へ歩いていった。
「ねえ、それ真珠だよね? それは、バネブーさんの落し物で、たーいせつなものなんだ。かえしてくれない?」
「やーだね」
「!!」
「だーれがかえすもんか。こーんなきれいな真珠。拾ったのはぼくだしー」
「だったら力ずくでいかせてもらうよ! ひっかく……」
 テルは思いっきり腕を振り上げたが、おろしはしなかった。モモにおさえられたからだ。
「バカじゃない? 真珠も傷つくわよ」
「うっ……」
「ばーか、ばーか、絶対あげないもーん……ね……」
 ぱたん。リーシャンはそう言ってその場にそっと倒れた。
「!?」
「お、おなかすーいた……」
「はあ?」
「なんという……」
「うるさーい! ぼくは3日間なーんにも食べてないんだぞ! だから真珠にお願いしてたのにー」
「……そういうことだったのか……」
 この真珠を、リーシャンはお守りとして持っていたということだ。見つけた食べ物は他のポケモンに盗られるばかりだったのだろう。
「じゃ、これ食べる?」
 テルは、さっきカラナクシとの戦いで守り抜いたオレンの実を出した。
「ちょっ、テル、いいの?」
「もともとここでピンチになった時に使う予定だったんだ。特にバトルで負けそうな時もなかったし、これはあげていいんだよ。ほら」
「あ、ありがとうございますー。真珠、バネブーさんにもっていってあげてくださーい」
 リーシャンは泣きながらお礼を言ってくれた。



「よかったね。真珠がもどってきて」
「ほんとよかったですよ! あなたたちにはどう感謝すればいいか……」
 バネブーは心から喜んでくれた。
「いやあ……」
 はじめはしぶしぶ行った落し物拾いだったが、こういうのも悪くないな、と思った。
「これはお礼! 1000ポケとモモンスカーフです!」
「わあ! いっぱいだ! モモ、何に使おう?」
「テル……残念だけど、ほら」
 モモは、ちょいちょいっと上を指した。そこにぺラップが止まっていた。ぺラップはおりてきた。
「はい、この1000ポケはほとんどがギルドのわけまえだから、きみたちは100ポケね!」
「え〜? これだけしかもらえないの?」
「うるさーい! これもギルドのルール!それに100ポケだけでも十分だろ!」
「うー……」

 あたりはもう真っ暗だ。いつのまにか夜になっていた。
「じゃ、そろそろ寝ようか」
 モモは藁の寝床に入った。
「うん。おやすみ」
 テルは目をつぶる前に少し窓を見た。満月がテルの頬を優しく照らしていた。
(……昨日も満月じゃなかったっけ?)
 テルはそう思ったが、昨日の月が満月になる直前だったんだ、と判断して深い眠りについた。