「やっと見つけた……ずいぶん広い森だったな」
 その地……トレジャータウンよりかなり北東に行った場所にある“キザキのもり”は、雨雲にすっぽりおさまって豪雨であった。
「それじゃ、これはもらっていくぜ」
 しゅっ!
 その場所で何かが、確かに変わった。

第6話 〜洞窟入り口〜

「よし! それじゃチームダッシュも探検に行ってもらうよ!」
 ある朝、おやかたがこう言った。
「え」
 探検。それは自分たちがあこがれていたことだ。だがテルはいまいち実感がわかずおろおろした。
「“たきつぼのどうくつ”に、何かすばらしい宝物があるんだって。きみたちで調べてきてよ」
「え、えーと……」
「わかりました」
「! モモ!」
「よし♪ どうくつの場所は地図に描いてあるから、しっかり行ってくるんだよ」
 テルは返事に困っていたというのに、モモは即答してしまった。
「どうして? おれ、まだいいって言ってないじゃん」
「断るつもりだったの? 探検行きたいって、たまに言ってたじゃん。それにチャンスは貰っとかないと、依頼こなくなるわ」
「うっ……そ、そうかも……」
「準備ができたら、すぐに行くわよ」



「ここだね」
「ここよね」
 地図に描いてあった“たきつぼのどうくつ”とは、確かにこの場所のことを指している。だが、何かが違うのだ。
 洞窟なのに、入り口がない。ただ目の前をごうごうと滝の水が落ちているだけであった。
「ここをどう調査しろっていうんだよー!」
「ほんとに……」
 そう言いながらも、モモは少しずつ滝に近づいていった。滝の、粉のような水しぶきがかかった。
「うーん」
「モモ! 触ったらあぶない!」
「……痛っ!」
 モモは滝に触れてみた。ものすごい勢いで水が落ちているためか、すごく指が痛くなった。だが、モモは指の痛みをすぐに忘れた。

 モモの頭の中に、暗い情景がうかびあがる。
 それはさっき見ていた場所……たきつぼのどうくつであった。
 滝の前に立っていたポケモンは、一旦後ろへさがった。そして全速力で滝につっこんだ。
 ドン! 滝の向こうにたどり着いたようだ。そして奥へとつづく穴を進んでいき……

 脳裏に浮かんだ情景は、そこでプツンと切れた。
「モ……モ?」
「見えた」
「は? 何が?」
「テル、前話したでしょ。ここに来てすぐの頃に、目まいに襲われて映像を見たって。あなたも見たでしょ。あれが起こったのよ」
「えっ……えええぇええぇえ!? でもモモ、最近起こってなかったんでしょ?」
「私にも、なんで起こったのかはわからないわ」
「で、何が見えたの?」
 テルとモモは、お互いにつばを飲み込んだ。
「この滝を猛スピードでとびぬけていって、……その中の洞窟を進むポケモンを見たの」
「この滝って、この滝?」
 テルは、さっきからずっとごうごう音を立てている滝を指差して言った。
「そうよ」
「でも、こんな滝、どうやってつっこむんだよー」
「私にもわからない。でも入り口もない」
「……やってみる、っていうのか?」
「もちろん」
 モモはそう言って、助走をつけるためにさがった。
「……じゃ、おれも……、やってみよう!」
 テルは、モモの手を握った。モモもテルの手を握り返した。
「いっけえええーー!!」

 バシャーン!
 ドン!
 どこかに着いた。テルは、水びたしになっている体をきれいにした。
 目の前に、どこまでも続くような暗闇が広がっていた。
「ついた?」
「ついたね」
 テルとモモは、果てしない沈黙の空間を見ながら、立ち上がった。