第6話 〜洞窟入り口[2]〜

「とりあえず、進もうか……」

(うーん……さっきの滝、なんだか懐かしい感じがしたんだけど、それは気のせいだよね……?)
 テルはそう思ったが、それは心の中に置いておいた。

 洞窟内はとても静かな場所であった。そして運のいいことに、洞窟内のポケモンたちは皆眠っていた。
 テルたちはポケモンたちを起こさないように、息を殺して歩いた。

「これ以上は進めないみたいだね」
「調査といっても、何もなかったわね。……あら?」
 モモは何かに気づき、そこに向かって走っていった。
「わあ! きれいな宝石だわ」
 モモは奥にあった宝石にさわった。とたん、目まいがした。
(きっ、きた……)
「モモ? どうしたの?」
 テルはモモに訊いたが、すぐに状況を察したらしく、口を閉じた。

 さっきのポケモンは、この宝石のてっぺんにあるスイッチを押した。
 すると、右のほうからものすごいスピードで水が流れてきて、そのポケモンは流された。

 モモは、そのポケモンは誰なのかを知るために、意識を集中した。
 ピンクで、ぽっちゃりしていて、耳のある……。
(あ、おやかたさまだ!)

「おれにもさわらせてー! きれーな宝石だな、あり? 何かスイッチあるぞ」
「あ、テル、それは」
「ポチっとな」
「ギャー!!」
 モモはすぐにテルの右側に立った。もうすでに水は迫ってきている。
「ぎゃあぁぁあああぁああ!!」



「げほ、げほ……水が流れるなら、先に言ってくれよ」
「あんたの行動が早すぎるのよ、耳ないの?」
 テルはむっとした。だが、モモには何も言わなかった。自分が悪いからだ。
 テルたちは落ち着き、下からあったかいものがもわもわあがってきていることに気がついた。温泉だ!
「いきなりふっとんできた時はびっくりしたわい」
 温泉のふちに立っていたコータスが言った。
「ここは……」
「温泉じゃい。洞窟の近くのな。ゆっくりしていくがよいぞ」
「ありがとうございます」
 ほっこりした温泉にゆっくりつかって、テルたちの心もほっこりした。



「おかえり♪ どうだった? どうだった?」
「流されました。そしてあったかかったです」
 モモは体験したとおりのことを言った。それから詳しく教えて欲しいとプクリンにせがまれ、今回の探検について報告した。
「へえー、それは大変だったんだね」
「ところでおやかたさま、ひとつ訊きたいことがあるのですが」
「いいよ♪ なになに?」
「おやかたさま、あの洞窟に行ったこと……ありますよね?」
「えっ……」
 一瞬の沈黙ののち、プクリンは続けた。
「そ、そうだったかな、そうだったかもね、アハハハハ……」
「……」



 ごはんを食べて、ギルドのポケモンたちが部屋へ行った頃。
「ぺラップぅ! 何で気づかれてるの? ひょっとして、あれのことも」
「足跡でもあったんじゃないですか? でも大丈夫ですよ、“例のブツ”が見つかったわけじゃないようですし」
「そ、そうだよね! ボクはただ、あそこの温泉につかってもらいたくて、探検してほしい、なんて言ったんだし」
「彼らも満ち足りた表情をしていましたね。よかったよかった♪」

 プクリンたちがこんな話をしているとは、テルとモモは知るよしもなかった。