この前会った人を思い出させる人に会った。
いつものようにビッグスタジアムに、サッカーの練習を見に行き、帰路についた時だった。
鞄から、ピンバッジに加工していた“勝利のゼブライカ”が取れてしまっていたのだ。しかも、気づいたのは日が沈んでから。
暗いところでも視力が良い、ゴチミルのごっさんにも協力してもらって、ライモン中を探す。しかし、どこにもない。
「えっ……どっ、どーしよー!」
まぬけな声をあげて途方に暮れていると、こつ、とブーツの音がした。振り返ると、そこに女の人が立っていた。
「あの……あなた、「メグ」……ちゃん?」
戸惑いながら訊ねてくるその女の人の右手には、“勝利のゼブライカ”がのっていた。
「……はいっ! メグです! あっこれは、その“勝利のゼブライカ”が欲しいから嘘ついてるとかじゃなくて、ほんとにメグです!」
「そう」
女の人はくすりと笑った。
「これを拾った時に、誰のかなと思ってたら、メグちゃんぐらいの歳の子たちが、それメグのじゃね、金髪で左頬にピンクの星ついてる、って教えてくれて。左頬にピンクの星、ってこういうことだったんですね」
言われて、私は思わず左頬に触れた。
メダルを返してもらって、少しだけその人と話した。
女の人の名前はチトセ。おしとやかで、ロングスカートが似合うお姉さんだ。
それに、チトセさんは珍しいポケモンを持っていた。
「い、色違いっ!?」
「そう。ゼブライカの三縞さん。メダルがゼブライカの目みたいだったから、好きなのかなって」
「えっと、あのメダルは、好きなチームのマスコットキャラをイメージしてて……でもゼブライカももちろん好き! 色違いなんてはじめて見たんですけど、こう、光り輝くんですね」
たまらず、メグは三縞さんにメダルをかざす。普通のゼブライカよりやや青白い鬣が、ライモンジーブラーズのキャラ、ゼブライカの“ストリーク”を模したメダルを七色に輝かせる。
「勝利パワー、ゲットだぜ! ……なーんて。シママのまっさんにも会わせてあげたいけど、もう夜ですしね」
そうだ、日は沈んでしまっている。ライモンは夜も賑やかとはいえ、そろそろお腹も減ってきた。
「それじゃ、また会いましょうか」
「いいんですか!?」
「……また夜になっちゃうかもしれないけど」
「全然大丈夫ですよ、私もうオトナですから!」
そう言ってから、チトセさんと別れた。こうなってしまえば、もはやオトナなんだかコドモなんだかだ。
家が見えてきた時に、私はふと思い出した。チトセさんは、白い髪に赤い目の人だった。この特徴は、この前会ったおんぼろマントの人に似ている。
って、おんぼろマントって特徴で言うのは失礼か、白髪のスレンダーな人か、と訂正する。
チトセさんと、あのスレンダーな人。二人とも、今までに会ったことのないタイプの人だった。
131010
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