使用ポケモンは三体、と言われ、カグロは山に生息していた強い野生ポケモンを捕まえ、手持ちに加えた。サクハとナズワタリではパソコンの管理者が異なり、ポケモンの移動が困難なためだ。
「ツンベアー……本当にそのポケモンでいいのかしら?」
「かまわん。レベルは充分だろう」
「へぇーこいつツンベアーっていうのか! かぁっけーなぁ」
ステラがその白いつややかな毛並みを持つポケモンを見上げた。カグロはステラにだけ聞こえるように話し始める。
「俺はこいつが先発でいい。ネオラントかウルガモスを出せば、すぐに弱点を突いてしまうからな」
「……無理すんなよ。わかった、じゃあオイラはガネルでいくぜ」
ツンベアーとハガネールの鋭い視線が、ミオとヤエのモンスターボールに向いた。相手にとって不足なし、とミオが不敵な笑みを浮かべた。
「ではまず、ユキノオー。お相手してさしあげて」
「バクーダ、勝ちに行くよ!」
ジムリーダー側も重量級のポケモンを出す。ユキノオーは腕を振り上げ、バトルフィールドにあられを降らせた。
「あなたにとっても有利かもね、カグロ」
ツンベアーの鼻息が荒くなったのを見て、ミオが言った。ユキノオーとツンベアーは堂々としているが、ハガネールにとってこの状況はやや辛いようだ。
「オイラにとっては不利だー! でもそれはバクーダも同じだしなぁ……」
「残念、バクーダはこの寒いナズワタリで過ごし続けた。熱帯住みのポケモンとはわけが違うわ」
そう言ったのもまたミオだった。その言葉をうけ、ヤエはぐっと前を見据える。
「“草結び”」
先手を取ったのはユキノオーだった。ハガネールの尾の下に潜り込み、ハガネールにとって死角となったところに草の罠を張る。
「危ない!」
ハガネールの視界に入るよう逃げれば、ハガネールはまんまとその罠にかかってしまった。
「ガネル!」
「ふふ、体重が重いほどダメージも大きくなる“草結び”……おたくのガネルさんにとって、なかなかの痛手じゃない?」
「くそっ……」
「ツンベアー、“つららおとし”」
二人の会話をよそに、カグロはツンベアーに指示した。育成もしていなければ懐いてもいないポケモンだが、その攻撃力の高さはすでに見抜いている。
その鋭いつららを打てば、硬い皮を持つユキノオーにとっても大きなダメージとなった。
「ユキノオーは草タイプも入っている。それに、防御はそこまで高くない、だろ」
「さすが、よく知ってるわね」
次はバクーダか、と、ステラとカグロはそちらを向く。
物理か、特殊か。バクーダとともに、二人はヤエの指示を待った。
「“大地の力”」
「やべぇ、特殊技か! ガネル、できるだけ上に」
「馬鹿かお前は」
「えっ……そっか、できるだけ地面にはりつけ!」
ハガネールは姿勢を低くし、バクーダの攻撃に耐えようとする。地面とぴったり馴染むところがあったのか、ハガネールはダメージを受けたが、吹き飛ばされることはなかった。そのまま長い身体でじりじりとバクーダを囲む。
「“アクアテール”だ!」
ハガネールは、ぶん、と尻尾を振る。噴き出した水は一部が凍りついた。
ハガネールがそこまで得意とする技ではないが、バクーダに対して威力は四倍だ。これにはバクーダも耐えられなかった。
「バクーダ!」
「よーっしゃこれで……って、ガネルも!?」
技を放った後、バクーダに続きハガネールも倒れた。
「ハガネールは熱が苦手でしょう? 背中の火山に触れてしまえば、いったいどれだけ熱く感じるか。アクアテールの当てどころが悪かったわね」
「ぐっ……戻れ、ガネル。よくやってくれた」
あられがぽつぽつ降る。フィールドに立っているのは、あられが好きなツンベアーとユキノオーだった。またこのフィールドに、次のポケモンが降り立つ。
「よっしゃーいくぞ、ルンパ!」
「ルンパッパッパー!」
張りつめた空気に似合わない陽気さで、ルンパッパは片手を挙げてポーズをとった。
「ブースター、お願い」
ヤエはブースターを繰り出す。このポケモンも雪国育ちなためか、体毛が他のブースターより厚く見えた。
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