そうして、しばらくの間、雨をやりすごした。
エデルは、ルーのことを思いながら、自分が以前から持っていた迷いについてもまた考えていた。
タマムシ大学医学部、携帯獣学科への進学。
それはドレイデン家の夢であり、自分自身の夢でもあったはずだ。
それが、迷いであるともいうのだろうか。
本当に自分がやりたいことは何なのだろうか。
「……わたくし、ステラやカグロを見ていると、世界中のトレーナーについて知りたいって思うの」
エデルにとっては独り言のつもりだったが、ルーを含む三匹は真剣に聞く姿勢になった。
「あの二人、全然タイプが違うでしょ? 色々な人間とポケモンの絆のかたち。それを知りたいの」
自分とルーも、また絆。ルーがそう思っていると嬉しいんだけど、とエデルは密かに思った。
「あなたたちだから話せたわね。ありがとう。……あら?」
ポケモンたちが空を見ている。雲が去りかけの空には、虹色の羽を持つ、不思議な光に満ちたポケモンが空を飛んでいた。
伝説のポケモン、ホウオウ。しかも、ニュートラルポケモンだ。
「晴れた空には、あなたがお似合い」
地面を見ると、溝に光が満ち、その光は形を保ったまま浮かび上がった。溝の正体は、ホウオウの地上絵だった。
「きれい」
ホウオウはエデルの上空を通過する時、何か赤いものを落とした。エデルが手のひらを空に向けると、それはぴったり、エデルの手のひらにおさまった。
「星の……かけら? ねぇ、そうなの?」
ホウオウからの返事はない。
「おしゃべりが苦手なのね、きっと」
地平線の向こう側に、見慣れた人の影が見えた。
「あ、いたいた! エデルー!」
「こんなところまで雨が降ったのか……スイクン、やりすぎだろ」
探検隊員たちも、それぞれ独自の成果をあげたようで、喜びあっていた。
エデルは、“星のかけら”を首からさげた。ステラはそれを見て驚き、カグロに言った。
「おい、カグロも、いつまでもポケットに入れてないで、首からさげろよ」
「……わかったよ」
カグロも、“水晶のかけら”を首からさげる。
「カグロ、あなたも!」
「ああ」
「これで“三つのかけら”が揃ったな! すげぇ!」
ステラは、思わずその場でジャンプした。
冒険の話をする前に、一行はクレーター村に向かった。
まずは汚れた身体をなんとかしなくてはならない。はじめ来た時の宿屋で、三人はシャワールームを借りた。
さっぱりした後、エデルは、ついてきて、と言って外へ出た。ステラもカグロも、エデルが何をしたいのかはわかっていた。
あの女性は、以前と同じように、村のはずれにいた。
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