ホーム > 掃溜 > 2016年09月

 
凍てつく山と竜の家3 - 2016/09/24(Sat)
 ずっとタマゴを持っていると重たいから、たまに他のポケモンに持たせる。すると、みんな興味を持ってくれる。
 自分のもとに戻ってきたとき、サイキがいとおしそうにそれを撫でると、メスのカイリューも寄ってきて、にこにこ笑った。
「喜んでくれてるのか?」
「そりゃあそうだ。託したタマゴを大切にしてくれているのだから」
 カイリューのかわりに答えたゼンショウの言葉をきいて、そっかー、とサイキはタマゴに向き直る。カイリューはすっとオスのカイリューのもとに移動し、夫妻でサイキの持つタマゴを見つめる。
「ほんと仲良しだな」
「こちらが妬けるくらいにはな」
「ふーん」
 サイキが見ると、視線に気づいた様子は見せたが、仲睦まじい距離感はそのままだ。
 確かにこれは妬けるかもしれない。
「じーさんはさ」
 サイキはゼンショウに話を振った。
「奥さんとかいねーの?」
 直後、ゼンショウの表情が曇った。まずかったか、とサイキはなんとか話を取り繕うとするとタマゴを落としかけ、割るまいと掴む。その様子を見て、ゼンショウの表情は戻った。
「よく働くやつだったよ」
 過去形か、とサイキは悟った。浅黒い肌に埋もれかけた黒い目は、なお強く前を見据える。
「……カイリューたちに負けないくらい仲良かったんだろうな」
「さあの。喧嘩もしたがな」
 ゼンショウの言葉を理解したのか、メスのカイリューは穏やかに微笑んだ。
「こんなことを言うのもおかしな話だが……こいつらでなくて良かった。残される者の孤独を味わうのは私だけで充分だ」
 それを聞いて真っ先に動いたのはサイキだった。タマゴを抱えたままゼンショウに寄ると、カイリューたちも同じ考えだったのか、柔らかな体で二人とタマゴを包む。
「……はは、そうだな。今は新しい命の誕生を楽しみに待つとしよう。……というわけで」
「は、はい」
 良い雰囲気だったのに、その後に投げかけられるであろう言葉が容易に想像でき、サイキは青ざめた。
「炊事だ。煙が目に染みるーとか言い出したら一からだからな」
「このオニがー!」


- Tor News v1.43 -