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ライメグを史実にする会(1)
2019/01/11(Fri)
 チェンスがチャンスを作り出す
 カロスが生んだストライカー
 チェンスはチャンスを逃さない
 ゴールネット揺らしてくれ

 突然、英語のチャントで背中を押された。
 ああ、ライモンジーブラーズ。少し前まで在籍していた、イッシュはライモンシティのサッカーチームだ。
 今はカロスの代表戦だからなのか、ご丁寧に「ジーブラーズのストライカー」の部分が「カロスが生んだストライカー」に変えられている。
 相手――ラムジ代表はまた一段と力をつけてきている。親善試合とはいえ、本気で挑めば得られるものは多いだろう。
 まだいけるさ!

 ○

 さすがに察してくれたのだろう、チェンスは出待ちをしていたメグのもとに会いに来てくれた。
「お疲れ様。ナイスアシスト」
 いつものようにメグが切り出す。あの後、チェンス自信がゴールネットを揺らすことはなかったが、良いクロスを上げ、先輩選手が決めてくれたのだ。結局それが勝敗を決した。
「メグちゃん。よくこんなところまで……ジーブラーズでの最終戦でも幕をくれたのに」
 チェンスの契約終了が決まっての最終戦、メグは、コールリーダーとしてクラブを応援し、最後に他のサポーターと作った「Thanks, Chence」という幕を掲げたのだ。
「だって、サッカーにはまったきっかけの選手なんだよ? あとは……ラムジ代表を見れる機会ってあんまないじゃん」
「おいおいカロス代表はいいのかよ?」
「ストリーミングでいつでもやってるじゃん」
「まあ……な。そんな時代にここまで来てくれたのか」
「大変だったよ、もー」
 この試合を観る前に、ミアレの街中でサーナイトに襲われ、病院搬送と、メグには散々な事件があった。マスコミに囲まれる中、ある女性の計らいでメグは病院を出ることが叶い、ギリギリで試合に間に合ったのだ。
「それに、言い忘れてたことがあるの。チェンス、次はフウラ・エアロブラストに行くんでしょ。じゃライモンジーブラーズとは同じリーグだよね」
「ああ」
「私はジーブラーズのコールリーダーだから、チェンスがいなくなってもクラブを応援する。でも、チェンスは容赦しなくていいからね。ジーブラーズに全力見せてやって!」
「……言われなくとも!」
 ジーブラーズで力をつけ、故郷カロスの代表選手にも選ばれたフォワード、チェンス。
 彼からサッカーの魅力にはまり、やがてはライモンジーブラーズのコールリードをするようになり、今では多くのサポーターたちを引っ張っているメグ。
 選手とサポーターという立場の違う二人だが、交わした握手は、とても固かった。

 数日間続いたミアレシティの事件は解決し、あの日メグを襲ったサーナイトも正気を取り戻したと知った。めでたしめでたし。では私もイッシュに帰ろうか……とした時、メグの端末にめでたくない通知が届いた。
「えっ、コウライ!? 負けたの!?」
 それはライモンの男友達、コウライが「チャリザードU-20二部」のグループリーグで負けたことを知らせる通知だった。
「えっ……ここで勝ち上がれたらイッシュに戻っても一部で登録できるって……」
 チャリザードカップ。もとは合衆国の東海岸でのみ行われていたポケモンバトルのリーグなのだが、近頃メガシンカでリザードンの権威が高まったカロスなど、欧州の数地方にも広がった大会だ。コウライがカロスに行くとメグに告げた時、時期が合えばあちらのチャリザードにも出ると話していた。
「コウライ・カンザキ……苗字も同じ、間違いない……どれどれ。あっまだ未消化試合あるじゃん! これに勝てたら」
 勝点を見ると、最後の一人にグループリーグで勝てたら決勝トーナメントに出られる計算だった。
「……でもなぁ。あいつ結構前の試合の結果引きずるタイプなんだよなあ、ああ見えて」
 たまに負けるから応援しがいがある、と本人に言うと、軽くど突かれたことがあった。しかし、今はその気持ちに近い。
「……それにさ、」
 コウライはどうなのかさっぱりわからないが、メグにその気がないわけではないのだ。
 ポケモンバトルよりサッカーが好きで、コールリーダーとして常に応援しているクラブもある。交流した他チームサポーターのゴール裏に遊びに行き、一緒に応援することもある。それに加えて、ポケモンバトルで他の個人を応援するなんて、本来は飽和状態なのだ。
「それでも応援してるなんて……ねえ」
 コウライは気づいているのだろうか。
 会えば、何かが変わるだろうか。

 振り返って、フウジョタウンのサッカースタジアムを見上げる。異国カロスで、英語でチャントを歌うことはそれなりの勇気を伴った。
 それでも、チェンスはアシストで応えてくれて、良い送り出しもできた。
 全てはコールリーダーとしての経験の賜物だ。
「……もう一度、やるしかない!」
 そう言ってメグは振り返り、バスを待ちながら、携帯端末で今日の宿を探した。



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