ライメグを史実にする会(3)
2019/01/13(Sun)
別のブロックの試合が始まり、場外は沈黙していた。
今応援しなければ後悔する。その思いだけでここまで来たから、気分はすっきりしている。
「おーいー!」
では帰ろうか、と思ったところに、その声が自分めがけてかけられていることに気づく。
「メグー!」
「えっ」
両手を広げて駆けてくる彼、コウライを無視し、メグはシュバルゴのナイトと抱き合う。
「やったねナイトー! カッコ良かったよ」
「シュシュ!」
「っおおおおい!」
コウライの突っ込みを受け、メグはコウライのほうに向き直る。
「……で?」
我ながら冷たい態度だと思ったが、合わなかった時間というものがあるのだ、メグとて付き合ってもいない、もっと言ってしまえばはっきりしない異性とそこまで触れ合いたいとも思わない。
「襲われたってほんとか!?」
「え」
不意をつかれた。自分の話が大好きなコウライから、まずメグを心配する言葉がかけられるとは思っていなかったのだ。
「気をつけろよ!」
「そっちこそ予選敗退しかけて大丈夫?」
「何も言えねえ……」
久しぶりでも、少し意地悪をしても、異国の地で昔のように話せている。その事実がメグには嬉しく、顔も綻んでしまう。
「大丈夫! この通りぴんぴんかなーここまで応援しに来る余裕があるくらいだし?」
「あのチャントさ……」
「うん? 自信作だよ」
「間違いなく母さんが爆笑してる」
「ふふ……あのさ、心配してくれてありがとうね」
珍しく気遣って貰ったのだから、このぐらいは伝えねばならない。目を見て言うのはなんだか気恥ずかしくて、コウライの鼻を見て言ったのは内緒だ。
「メグ。……決勝トーナメントも応援してけよ」
「えーっ何それ」
「応援してくださいっ!」
「他にエルさんたちのオリジナル曲ないの?」
「ないな……」
「だよね」
ならばどう応援したものか、とメグは考えたが、別にサッカー基準でなくても、声をかけていけばいいのか、という結論に至る。
「わかった。優勝したら賞金で滞在費出してね」
「へーへー……」
○
メグと別れたあと、あちゃぱー、と後方から声をかけられ、コウライは振り返った。そんな言葉をかける人間はこの場に一人しかいない。
「ヒナさん」
「メグちゃん、付き合ってもない男子とハグしたないって」
ヒナタは仁王立ちで言い放つ。
「何だよそれ本人が言ったのか!?」
「いや自分わかりやすすぎやねん、なになし崩し的に付き合いたい思てんねん、男見せんかい」
「えーオレもうハタチだぜ!? 何回かハグしてデートしたら自動的に付き合ってることになるのが大人の恋愛ってもんで」
「あんたが大人の恋愛語るとか片腹痛いわ」
「ヒナさん、やたら厳しくねえか……?」
コウライが言ったところで、二人の携帯端末に通知が来た。チャリザードカップの公式アプリからだ。
決勝トーナメントでは、コウライとヒナタの名は、決勝戦であたる可能性のある位置にあった。
「ほほーう……」
「チガヤとアオイちゃんはもう一部なんだ……今回一部に上がれるのは上位二人、絶対負けられねえ」
「言うとくけど、うちが昇格決まってるからって決勝で当たっても……かっこ良く勝たせたったりはせえへんで」
「なっ……トレーナー同士だ、当たり前だろ!」
シュバルゴのナイトがコウライの頬を突っついてくるのを見て、ヒナタはふっと笑った。完全に見抜かれていた。
しかし、メガシンカやフェアリータイプなどの研究で、一般トレーナーの世界順位が急上昇したカロスのトレーナーの実力は伊達ではないと、この大会でもコウライは感じていた。これからは決勝トーナメントだ、一敗すればそこで終わり。
「ナイト、気合入れ直すぞ! まずは皆で特訓だー!」
まずは走り込みから。全員を出せば、足音も大きい。どたどたと、それぞれの速さでダッシュを始めた。
○
「こりゃうちらも負けられへんなぁ。……なあ、ソーニャ?」
そのまま走っていってしまったコウライたちを見送り、ヒナタも相棒のムシャーナに話しかける。
「まずは場所確保といこか。テレポート!」
そう言って、彼女もその場から消え去った。