グローマの話を練ろうの会(1)
2018/10/22(Mon)
僕は信じていたんだ。
古い信仰を捨ててコクリンの再興をはかる、チャンピオンの思想は絶対的なものだと。
多種多様な人々が共存するうえで、信仰なんて要らないのだと。
○
どうやら先祖たちは閉ざされた地を好んだらしい。
この偶然に何か説明をつけるとすればこうなるか、と、デイジは新たに降り立った陸地を眺め逡巡する。
ミタマ地方に続き、砂の民の子孫を探しにやって来たのは、ひとつの大陸、コクリン地方。地形も文化も何もかもミタマ地方とは異なるのに、似た要素がひとつ。最近まで、外国との交流がほとんどなかったことだ。
それでも最近は貿易港として開かれているのが、ここシダオリタウンである。しかし発展はまだまだこれからといったところか、今はまだ牧歌的な風景が広がっている。
以前は別の町だったのか、突然そんな風景に廃墟が挟まると、デイジは故郷を思い出して目を伏せる。砂の民が立ち退きを要求されているクオン遺跡も、アフカスの民が昔住んでいた場所であり、彼らがカロス人植民より前に使っていた文字が壁面に刻まれている。
厄介なものだ。元々追い出されてそこに行き着いたのに、デイジにとってはそこが故郷。歴史地区として残すため、権力によって引きはがされることをデイジは好まない。
ふと、木の影がきらりと光った。それが白髪だと気づくのにそこまで時間はとらなかった。いつからここに居住しているのか、砂の民の噂をきいたのもこの町。
「……お前」
「なにやつ!」
話しかけるやいなや、木の影からブーメランが飛来してきて、デイジは避けるので精一杯だった。どうやらブーメランは持ち主のもとに返ったようだが、目の前にはガルーラが立ち、デイジを威嚇する。
「……っパレード!」
ドンファンのパレードを出す。白髪の者は顔を見せない。
「後ろから話しかけて悪かった。俺たちに攻撃する意図はない」
デイジがそう言うと、ドンファンも半歩下がる。ガルーラは振り返ってトレーナーの出方をうかがった。
「……そう。ここ最近は随分と警戒心が強くなってしまって」
トレーナーが木の影から出てくる。白い髪に褐色肌、それに赤茶色の瞳。見まごうことなき砂の民だ。
十代半ばかそのぐらいの少年が持つブーメランには、モンスターボールがついていた。どうやらガルーラのボールらしい。
「俺はデイジ、砂の民だ。サクハ地方に民の信仰を復活させるため、世界に散った同胞を探している」
名乗ると、少年は訝しげな顔を見せた。
「へえ、おかしなことしてるんだね。僕はグローマ、こっちはガルーラ。でも、なんだか面白そうだな。君がなぜ、信仰を復活させようとしているのか……話聞かせてよ」