+ 包み紙の半分 +


BWクリア当時の妄想。再会したNと女主人公(トウコ)の話。
おもっくそ捏造なので、こんなん考える人もいるんだ、みたいな軽い気持ちでお読みください。


 たまに、ゼクロムも空を飛びたい日がある。
 そんな時、あたしはカナワタウンよりさらに向こうを、一緒に飛ぶことにしている。
 ゼクロムはたまに荒い飛び方をするけど、あたしを落とすことは絶対にない。

「気持ちいいねゼクロム!」
 あたしがゼクロムにそう声をかけると、ゼクロムは喜んでか、少し加速する。
 今日の天気は晴れ。このあたりはイッシュではないから、ゲートで天気を知ることができない。運がよければ空を散歩 できる、ということだ。

 急に、ゼクロムは進行方向を変えた。
「え、どうしたのゼクロム?」
「バリ」
「……あれは!」
 前方に見える白い竜。レシラムだ。
 レシラムに近づくにつれ、背中に乗っている男性の姿がよく見えるようになる。
「Nだ……」
 レシラムはゼクロムに気づいてか、近くの草地に着地した。

「N! どうしてここに」
「どうしてって。トモダチが空を散歩したいっていうから。トウコも?」
「うん。今までどうしてたの?」
「トモダチと過ごしてた」
 かみ合っているようで微妙にずれている。
「ゼクロムとは仲良くやってるみたいだね」
「うん。あ、そうだ」
 あたしは、あることを思い出して、バッグにあるそれを探した。
「……これ」
 あたしは、彼に“ふしぎなアメ”を差し出した。
「あんたの部屋で拾ったの。あたし、あんたの逮捕には興味ないし」
「……」
 Nは一歩あたしに近づいて、それを受け取る。そしてそれを、そのままゼクロムの口に入れた。
 ゼクロムは一瞬戸惑ったが、すぐに飲み込んだ。
「へ?」
「プレゼント」
 当然ながら、ゼクロムのレベルが上がる。
「何をっ……」
 Nはアメの包み紙を破いて、その片方を私に差し出しながら言った。
「ボクには、もういらないものだから」

 それから、お互い何を言うこともなく別れた。
 ゼクロムとの帰り道、半分になった包み紙を眺めながら、もう彼と会うことはないだろうと、何となく思った。