💙吉野家騒動で思い出した、私はなぜ近鉄特急ひのとりが好きなのかの話

吉野家騒動。
先日の炎上発言と謝罪・解任のことを指しているが、月日が経ったときのために軽く触れておく。
早稲田大学で開催された社会人向けセミナーにおいて、吉野家常務(当時)の以下の発言が問題になった件だ。

“生娘をシャブ漬け戦略”
田舎から出てきたばかりの若い女の子を生娘なうちに牛丼中毒にする。男に高い飯をおごってもらえるようになれば絶対に食べない

はじめは女性蔑視という切り口で物議を醸した発言だが、
男性顧客、また吉野家の商品そのものをも下げる発言であるとして、言ってみれば盛大に燃えた。
どこが問題なのかはネットで言われ尽くしているため、このnoteで細かくは言及しない。私が特に気になったのは「男に高い飯をおごってもらえるようになれば絶対に食べない」の部分だ。

男女共同参画社会基本法が施行され、今年で23年になる。
それなのに、未だ「女性が稼ぐ力をつける」ことが想定されない世界がある。

女性が「高い飯」にありつけるのは「男」に「奢って貰」う時であって、
自分で稼いで自分で食べたいものを決めることは、想定されていないのだ。

「女性が稼ぎの主体になる」ことが想定されていないのは、なにもこの発言だけではない。
例えば、小室圭さんと眞子さんの報道でも、圭さんの稼ぐ力にばかり言及されている。
型破りな結婚だったのに、「男が支える」「女が養われる」ことがいつまでもどこまでも前提。

別に眞子さんが稼いで圭さんを幸せにすれば良いのでは?
美術館系としてはかなり有利な家の出なのだから、そこでキャリアを積むなり、別の稼ぎ口を探すなりするんだって、良い人生だよね。

あれらの報道を見るたびに思うのだが。

ちなみに、吉野家が起用している藤田ニコルさんはまさに「自分で稼ぐ女」代表のような方なので、
そのような価値観が常務レベルの方に残っていることにとても驚いた。

ふと思い出した「ひのとり」のPVには、「自分で稼ぐ女」が描かれていた

自分で稼ぐ女の描写について、過去にも考えていたような気がする。

そして思い出したのが、近鉄特急「ひのとり」のデビュー前PVだった。

2019年にYouTubeなどで公開された記憶があるのだが、その映像はどうしても見つけられなかった。
しかし、そこには、2+1列配置のプレミアムシートで一人乗りをする女性のすがたがはっきり描写されていた。

私はそのPVを見たとき、えもいわれぬ好感を抱いたことは確かだった。

鉄道の広告に出てくる女性客といえば、異性カップルの片方であるか、母親であるか、「女子旅」の構成員であるかだ。
あとは、マスコットガールとして起用されている女優さんやモデルさんの「一人旅」イメージか。

少なくとも、ビジネス利用を想定した特急のプレミアム席に乗れる可処分所得をもつ女性の描写は見たことがなかった。
特急ひのとりの”Hello, new standard”というフレーズが、背中を押してくれている気がした。

そのときのPVは残念ながら見つけることがかなわなかったが
(あったら教えてください)、
2020年に公開されたデビューMOVIEにも、手法は違えど「一人乗りの女性」が描写されていたので代わりにこれを紹介しておく。
(※残念ながらこちらもリンク切れ……というかひのとりのTwitterアカウントが終了したみたいです)

本日は、ひのとりデビューMOVIEのご紹介です。#くつろぎのアップグレード をコンセプトに
車内でのくつろぎ感を表現しました。#ひのとり #HINOTORI #近鉄 #近畿日本鉄道#プレミアムシート #全席バックシェルは日本初#本革シート #カフェスポット #ベンチスペースpic.twitter.com/Jz6oLj4lXE— ひのとり【公式】|近畿日本鉄道 (@hinotori_80000) March 19, 2020

映像を色々見ていくと、男性の一人乗りはもちろん、男女ペアや女性同士も描かれている。
私も実際いろんな使い方をするため、描写が多彩だとこういうのもいいな〜と次に乗るきっかけになる。

とはいえ、欲求5段階説を考えるとちょっと切ない気持ちになるね

しかし、こういうことを考え出して一晩経った頃。
私が「吉野家」元常務の発言で問題視したことも、マズローの欲求5段階説の上層に位置するもののポジショントークに過ぎないよねと、妙に冷静になった。

マズローの欲求5段階説を見直しておこう。
まずその5段階がこちら。

自己実現欲求
承認欲求
社会的欲求
安全欲求
生理的欲求

人間は、一番下の「生理的欲求」(生命維持のために必要なもの。食欲、睡眠欲など)が満たされるとその上の「安全欲求」(病気や事故などに対するセーフティネット)を求めるようになり、それが満たされるとさらに上に……という考え方だ。

世の広告は、これら5段階の欲求のどこに位置する人をターゲティングするか、という側面も当然考慮される。

数年前までの私は奨学金返済中の派遣社員であり、またうつ症状の処理方法もわかっていなかった。
その頃は確かに、男に養ってもらったら楽だよな、フェミニズムなんて子持ち正社員でマミトラに悩む女性のためのものでしょ、私はそこまで届かないと思っていた。

それがこの数年でうつ症状とも向き合えるようになり、奨学金も全額返済し、幸福度は増した。
多様なアウトプットができるようになった。
そしてこれを今、あなたが読んでくれている。

私の欲求の段階でいうと、近鉄特急ひのとりが広告で描写した「自分で稼ぐ女」像がしっくりきたのだろう。

対して吉野家は、おいしいものを安く提供するのが売りの企業だ
(私は肉類をほとんど食べなくなったが、牛丼は普遍的においしいと思う)。

常務の言うターゲットから、単純に外れてしまったということなのだろう。

ただ、外れた要因が、「男に高い飯を奢って貰える」ようになったからではなく、
「自分で稼げる」ようになったから、という違いなだけで。

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