Stage 1 : 旅の始まり


「ヒロトー」
 サクハ地方ハツガタウンは、今日も乾季らしいさっぱりとした朝であった。
「ヒロト!」
 その朝に似合わない声は一階まで届いた。
 ヒロトと呼ばれた少年は、二階の自分の部屋にいる。寝起きらしく、目をしぱしぱさせている。
「もうっ何度も呼んでるのよ! 今日はポケモンをもらって、旅立つ日でしょ? ミズホちゃん、ずっと待ってるのよ!」
「えっ……ああっ そうか!」
 ヒロトはあわてて着替え、リュックを持って階段を駆け下りた。
「ミズホお待たせ!」
「遅いよ! あたしはもう、わくわくして待てないぐらいなのに……」
 ミズホはむすっとしたが、すぐに笑顔に戻った。
「で、ヒロトが選ぶポケモンっていったら当然、あいつだよね?」
「うん、アチャモ。研究所の三匹じゃ一番仲いいしな。ミズホは当然キモリだろ?」
「もちろん!」
 これからの冒険の旅に目を輝かせる少年少女は、早足で研究所に向かった。
 その時、北の方からポケモンのなきごえが聞こえてきた。

「アチャー!」
「キャモモッ!」

 二人はすぐそちらを向き、それからお互い顔を見合わせた。
「今のって研究所の……」
「だな」
 二人は声がした場所――ハツガの滝に向かった。

 滝は今日もごうごうとうねりをあげていた。
 アチャモとキモリは、野生のチョロネコ二匹に睨まれていた。
「アチャモ! キモリ! お前ら研究所のやつらだよな?」
「チャモチャモ!」
「キャモッ!」
 二匹は、こちらに向かって突進してくる。それをチョロネコが追いかける。
「ひゃーっ! ど、どうしよう……」
「オレたちで何とかするしかねぇ! えっと、技は……」
「! わかる! キモリ、はたく!」
「アチャモはひっかくだ!」
 キモリとアチャモは、二人の指示に従った。チョロネコはどこかへ逃げていった。

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