Stage 11 : ナゾノクサとスバメの小冒険!


 カゲミから南、ホウソノシティへ続くルート7を歩くとき、ヒロトより前にナゾノクサが立った。
 ヒロトよりもはりきっていて、足取りも軽い。
「ナゾノクサ、ひょっとしてライラックさんのラフレシア見て……?」
「ナゾッ」
 当たり、というように、ナゾノクサはひとつ宙返りした。
「次のホウソノシティジムは……エスパーか。毒タイプが入ってるナゾノクサにはちょっと不利かもなぁ」
「ナゾッ!?」
 ヒロトがそう言うと、ナゾノクサは不満たらたらといった様子で地団太を踏む。
「あー悪い悪い! 相性が悪いのはワカシャモも同じだし、スバメだけじゃ勝てねーし、ナゾノクサもこれからしっかり鍛えような」
「ナゾッ」
 その言葉にナゾノクサは機嫌を取り戻し、早歩きになった。だが、それからすぐに足元の岩につまずいてしまう。
「あっ、ナゾノクサ!」
 ヒロトが言った時には、ナゾノクサは小さな穴にはまってしまっていた。それは人間が入れる大きさではないが、深くまで続いている。ヒロトは覗き込んで、ナゾノクサの名前を呼ぶと、どこか遠くのほうで返事が聞こえた。
「ポケモンが掘ったのかな……困ったな、僕は入れないし……そうだ!」
 ヒロトは、腰のボールに手をかけ、そのポケモンを出した。
「スバメ、ナゾノクサがこの穴にはまっちゃって……スバメはこういうとこ苦手かもしれないけど、探してきてくれないか? スバメなら空から僕たちを見つけることもできるし……」
「ちゅんっ!」
 スバメは、二つ返事で穴に潜っていった。
「頼んだよー!」

 スバメは、翼を広げにくい場所でありながら、高い視力を生かし、穴を進んでいった。
 たまにちゅん、と鳴き、返事を聞いてナゾノクサがどこにいるか推測する。やがて、どたどたと音が聞こえ、スバメはナゾノクサではないかと安堵した。だが、それもつかの間、その足音はナゾノクサのものではなかった。
「モグー!」
「ちゅん!?」
 その穴を掘ったポケモン――モグリューというのだが、スバメは知る由もない――が、スバメに鋭い爪を向ける。すぐに敵視されているとわかったスバメは、尖ったくちばしを向けて戦意を表した。
「ちゅんっ」
 スバメは“風おこし”をする。だが、穴の中では翼もたいして動かせず、相手が少し後ずさるだけにとどまった。
「モグ!」
 続いてモグリューの“ひっかく”がスバメを襲った。だが、スバメもこの程度ではへこたれない。ヒロトのもとで鍛錬したスバメと、野生のモグリューでは、体力で差が生まれる。
 ここは撒いて、ナゾノクサを探すことを優先したいスバメは、翼を器用に動かし、横に“風おこし”をぶつけた。
 壁にぶつかるモグリューの横をすりぬけ、穴の中を走る。だが、地べたを走るのが苦手なスバメと、穴の中がホームグラウンドのモグリューでは、どちらが速いかは一目瞭然だ。
 追いつかれる――と思った時、スバメは大きな草に足をひっかけ、滑った勢いで円形の光のもとに飛び出した。

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