Stage 11 : ナゾノクサとスバメの小冒険!


 スバメが飛び出した場所は崖であった。穴は崖から横に伸びている。
「ちゅん……」
 近くを飛んで、ナゾノクサを探す。だが、ナゾノクサはどこにもいない。
 スバメは自分が出てきた穴のほうに目をやる。まだあいつはあそこにいるのかもしれない。

 何者かに頭上を踏まれ、ナゾノクサは顔を出した。
 何者かというのはもちろんスバメのことだが、ナゾノクサはそれを知らない。その時のナゾノクサにとっての関心事は、目の前にものすごく機嫌の悪そうなポケモン――モグリューがいたことだった。
 だが、ナゾノクサも虫の居所が悪い。モグリューが襲いかかってくると、とくにそれに逆らうことなく“吸い取る”をぶつけた。
 そして、目の前で“溶解液”をモグリューにぶちまけ、どたどたとその場を去って行った。

 穴の端で、ナゾノクサは一旦立ち止まる。
 眼下で、仲間のスバメの声が聞こえた時、ナゾノクサはぴょんと飛び降りた。
 嬉しさのあまり、スバメがナゾノクサを抱きしめる。ナゾノクサは、少し汚れた頭の草でスバメを撫でた。
「ちゅーん!」
「ナッゾ!」
 その時、二匹の立つ足元が、ぐらり、と揺れた。何事かと足元に目を向けると、なにかがぎらりと光った。
「ドォン……!」
 二匹が立っていたのは、ドンファンの鼻の上だったのだ。自慢の鼻を汚され、ドンファンは怒り狂う。
「ちゅん、ちゅん!」
 二匹はなんとか鼻をつかもうとするが、さっきのモグリューとは違い、大きな体格差がある。ドンファンは鼻を振り上げ、二匹を大空へ放り投げた。
「ナーゾー!」
「ちゅちゅーん!」
 なんとかしなければ、と、スバメは飛ぶ体制に入る。
「あっ、おーい!」
 その時、二匹のトレーナー、ヒロトの声がし、スバメはそれを頼りに方向転換する。その上にどさりとナゾノクサが乗った時、スバメは崩れるように落ちて行った。

 ヒロトが受け取った時、二匹は目を回していた。
「だ、大丈夫か?」
「ぢゅーん……」
「とりあえず落ち着け! ほら」
 ヒロトは二匹を地面に寝かす。二匹の視界は、じきに定まっていった。

「あーでもよかったー。ホウソノシティももうすぐだし、もう二匹は戻って……ん? どうしたのナゾノクサ?」
 ヒロトがボールを出した時、ナゾノクサは汚れた頭の草をスバメに見せ、なにかを話し始めた。
「ナゾ、ナゾナゾナーゾー!」
 この時、おれは頭を汚したやつを知らないから復讐できないのにあのドンファンは短気だ、おれも汚したやつがわかればあれぐらいしてやりたいのに、とスバメに話しているのだが、ヒロトにはわからない。スバメは、穴の中で草を踏んで滑ったことを思い出し、なんともいえぬ苦い表情をつくった。

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