Stage 12 : 洞穴のいたずらプルリル


 ホウソノシティは、きれいに整備された天然芝がゆれる新興開発地だった。
 サクハの研究施設が並び、大きな図書館もある。円形広場では、子供やポケモンたちが楽しそうに遊んでいた。
「きれーなところだなぁ。ジムはっと」
 ヒロトは早速、案内図に目をやる。
「ここだな。……エスパータイプのジムなんだ、覚悟してかからなきゃな」
 ヒロトがそう言うと、地元の少年数人がヒロトに声をかけた。
「今のオモトーさんに、対策なんていらねーぜ」
「えっ、どういうこと?」
 ヒロトはすぐに訊き返す。
「だって、あの人ジジイだもん。頭の回転おっそいの。勝ちパターンってのがあって、それに従ってりゃ勝てるんだぜ。ほら!」
 その場にいた少年全員が、ヒロトにぴかぴかのバッジを見せる。
「オモトーさんに勝ちたいなら教えてやるよ。勝ちパターン。まあ、教えるまでもないかもしれないけど」
「……まず、オモトーさんのバトルが見てみたいんだけど」

 少年たちは、ヒロトをジムまで連れて行った。ホウソノジムはいつでも見学可能だ。
 ジムにそっと入ると、見慣れた少女がバトルをしていた。
「ジュプトル、“リーフブレード”!」
 その少女の支持で、オモトーのポケモン、サーナイトは大ダメージをくらった。
「サーナイト、戦闘不能。ジュプトルの勝ち。よって勝者、ハツガタウンのミズホ!」
「やったぁ!」
 見慣れた少女――ミズホは、以前見た時より随分立派になったジュプトルを強く抱きしめた。
「負けは仕方ない。ホウソノジムのゴーディバッジだ」
「ありがとうございます!」
 ミズホが嬉しそうにバッジを受け取り、スタジアムの出入り口に向かった時、幼馴染の視線に気が付いた。
「あれ、ヒロト?」
「ミズホ! バッジゲットできたんだな」
「うんっ。あとね」
「あと?」
「私の前で……フミヤが、バッジもらってた。なにも話せなかったし相手にもされなかったけど」
「フミヤもか……」
 ヒロトの表情に暗い影が落ちた。クオン遺跡でのあの一件がまざまざとよみがえる。
「お前ら、知り合いなのか?」
「うん。幼馴染のミズホ」
「ならもうわかったよな。勝ちパターン。素早い物理技をぶつければいい。そうですよねー、オモトーさーん」
 少年はわざとらしく、口元に手をあてて叫ぶ。ジムトレーナーたちの視線が一気にその少年に集中し、少年はそれからは何も言わなかった。
「……オモトーさん」
 ヒロトは、不穏な空気が漂う中でもはきはきとした声で言う。
「手持ちポケモンを回復させたら、次は僕の挑戦を受けてくれませんか」
「……すまない、この時間帯は墓参りに行くと決めているのでな。今夜、もしくは明日の朝でどうだ」
「そうですね。では、明日の朝お願いします」
 ヒロトが言うと、少年たちはくすくす笑う。
「スケジュールも全部パターンどおりってか」
「いいよ。僕も町をまわりたいし」

 整然とした街並みを、幼馴染の二人組が歩いていた。
 互いに久しぶりに会ったということで、これまでの旅路のことを話す。
「あれっ、ヒロト、手持ちまだ三匹?」
「え? うん。ワカシャモと、スバメと、ナゾノクサと」
「そっか。でも、オモトーさんは四匹使ってくるよ! 三匹じゃどうしても不利だと思うけど」
「えっ!」
 それを聞いて、ヒロトは焦りだす。
「ど、どこか、ポケモンゲットできるところないかなぁ」
「そうねー……ないことはないけど」
「どこ?」
 ヒロトはミズホに迫る。ミズホはためらいながらも、その場所を答えた。
「やすらぎの洞穴。この町の西にある……オモトーさんが言ってたお墓のことだよ。ゴーストタイプのポケモンがいるとかで……」

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