Stage 2 : ユート団の影


 クダイチューブに入ると、中にいた他のスバメたちもこちらに向かってきた。
「わ、わわっ!」
「ぴろっぴろー!」
 そしてはじめのスバメと同じように、ヒロトの影に隠れた。
「お、おいっ……」
「あーあ。怖いとかいってさ、だーれも入ってこなかったのに、なんか来たよ。何かぶってんのそれ? ターバン?」
 そんな声が聞こえてくる方を見る。緑色の髪で、お揃いの格好をした男二人が、見たことのないポケモンを連れていた。胸には、“UTO”のロゴが描かれていた。
「あのロゴは……!」
 ヒロトはすぐさま、フミヤの団員証を出した。ロゴは全く同じだ。
「you何てモン持ってんだよ!」
 団員証を見た、団員らしき男のうち一人が、ヒロトから団員証を奪った。
「あっ!」
「ってこれ、やべーよ! 見てみろよ! 次期ボスのやつじゃん!」
「マジじゃん! 何でこんなモン……」
 彼の手がかりである団員証を奪われてしまい呆然としたヒロトだったが、彼らの後ろにいる、眼鏡をかけた青年が手を振っているのを見逃しはしなかった。
 青年の後ろにも、また怯えたスバメがいる。自分の味方なのだろうか。
 ヒロトと青年がお互いを確かめ合ったことに気がついた団員は、団員証をポケットにしまった。
「待て待て待て! youたち二人で邪魔してきやがって! “イッシュ地方から連れてきたダンゴロがどれほど強いか”を確かめようという我々の崇高な実験を止めようとでもいうのか?」
 ヒロトはわけがわからなかったが、とりあえず図鑑を取り出した。図鑑には“データがありません”と表示される。その間に、青年は言った。
「あなたたちのしていることは、崇高でも何でもありませんよ。……ユート団」
「っせーな! you、これは俺達が持ってんだぜ。忘れてないだろうな?」
 団員たちは、何かよくわからない重たそうな機械を持ち上げ、青年に見せつけた。もとは青年のものらしい。
 とにかく重たいものらしく、その団員はまたその機械をおろした。
 それから青年は、ヒロトにもう一度視線を移し、苦しそうにウインクした。
 青年の足元にいるドンメルは、既に戦闘をしたらしく、疲れている。スバメたちも、ダンゴロというポケモンたちに攻撃されたあとらしく、全身傷だらけだ。
「……アチャモ、頼む」
 ヒロトはモンスターボールに手をかけ、アチャモを繰り出した。
「よし、まずは、“ひのこ”!」
 アチャモはダンゴロ二匹に向けて火の粉を放つ。だがダンゴロにはあまり効かない。
「へっへ、バカめ! ダンゴロのタイプは“岩”! 炎タイプの攻撃なんか全然効かないぜ!」
「そんな……」
 アチャモは他にノーマルタイプの技も使えるが、同じく岩にはいまひとつ効かない。
「よし、ダンゴロ、“ずつき”」
 ダンゴロはすぐさまアチャモのもとへ向かい、突起の部分をアチャモの腹に突っ込んだ。
「チャモー!」
 アチャモはかなり苦しそうだ。
 ――どうすれば。
 アチャモが何度か放った“ひのこ”のせいで、洞窟内に熱気が充満し、たまに立ちくらみが起こる。
 そんなヒロトに、一番初めに彼に向かったスバメが呼びかける。
「ぴろっ……」
 ヒロトがそれに反応すると、他のスバメも鳴きだす。
「……そうか。その手があった。スバメ、頼む。怖いかもしれないが、手伝ってくれ」
「……?」
「ダンゴロたちを囲め!」
 そのヒロトの指示に一番初めに従ったのは、やはり最初のスバメであった。
 他のスバメたちも続き、ダンゴロを囲む。
「コカーッ!」
「その固そうな身体! 炎攻撃は効かねぇけど、熱いもんは熱いだろ!」
 スバメにがっちり包囲されたダンゴロは、その熱気に耐えられず、ぱたりと倒れた。
「やったぜ!」
 団員たちは、目が点になる。
「やっ、やべぇ、こいつ、できる! なぜか次期ボスの団員証も持ってたし……ここは一旦、ボスに報告だ!」
 彼らは機械を置いたまま、お互いを押しつつ逃げていった。

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