Stage 3 : クダイシティのスタンプラリー!


 人やポケモンが行き来する商店街に一歩踏み出すと、近くにいた男性に呼び止められた。
「おんや、君は旅のトレーナーだね。しかも旅立ったばかりの予感! ワタシはニッチ。君、よかったらラリーしてかないかいん?」
「僕はヒロトです。ラリーというのは?」
「期間限定でやってるイベントなんだな。ラリー参加店のうち3店のスタンプを集めると、豪華商品と交換できるんだな! やるんだな?」
「面白そうですね。やります!」

 ニッチから貰ったカードを首からさげ、ヒロトはカードと町内マップを見比べた。
「オッチャンの八百屋、れすとらんマグカルゴ亭、ラムネ屋サンパワー……うん、このコースで行こうかな」
 ヒロトは、まずメインストリートである“しろくだり商店街”の“オッチャンの八百屋”に向かうことにした。
「はい、らっしゃーい! ……はっ! いつものだ、スボミー!」
「は??」
 店主と思しき中年の男性は、いきなりスボミーを呼んだ。レジのカウンターから、スボミーがぴょんと跳びあがる。
 そしてそのままヒロトの肩にのり、頭をよいしょと持ち上げて首からさげていたカードを取った。
「あ、こら!」
「坊主もポケモン持っとるんだろう? 捕まえて取り返してみな!」
「よ、よしっ! スバメ!」
 スピードなら、アチャモよりスバメの方が上。そう判断した。
 スボミーはそのまま、頭にヒモをからめ、カードを加えて逃げていく。スバメはスボミーを追いかけ、さらに後ろからヒロトがつく。
 ようやく追いつきそうになったところでスボミーは左にまがった。スバメは咄嗟のことで曲がりきれず、壁に激突した。
「ぴろーん……」
「きゅーっ! きゅっきゅ!」
 どうやらスボミーは笑っているようだ。
「クッソー! スバメ、まだ行けるか?」
「ぴろっ!」
 スボミーはまだ、奥で笑っている。ヒロトはスボミーをじっと見た。
「よし、スバメ、次も左だ」
「ぴっ?」
「多分スボミーもまた左に曲がる。あんまり遠くにも行けないだろうから」
「ぴろ!」
 スバメが飛ぶと、スボミーも逃げる。
 その道はあまりにも狭かったので、ヒロトは目で追うことにした。
 次の曲がり角で、ヒロトの予想通りスボミーは左に曲がった。
「ぴろんっ!」
「きゅーん!」
 そんな声がきこえて、スバメはもときた道を戻ってきた。くちばしにはカードを加えている。
「やったな、スバメ!」

「速かったな……びっくりだ」
「へへっ。あのスボミー、カードを右にぶら下げてて、右目の視界が狭くなってるんじゃないかなって思って。スバメが僕のことを信じてくれてよかったです」
「約束のスタンプだ!」
 そう言って、店主はスタンプを押した。可愛いスボミーのスタンプで、『よくできました』と書かれている。
「これは野菜とポケモンフーズだ! クダイの野菜はうまいぞー」
「野菜ですか……」
「ああ、坊主料理はせんのか? んー、それじゃ、マグカルゴ亭にでも行ってみろい!」
「え、マグカルゴ亭ならちょうど行くところです! それじゃ!」
「行ってらっしゃい」

 商店街は、複雑に入り組んでいる。路地裏のらくがきに、ヒロトはヒゲを付け足した。

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