Stage 4 : コモルーとクロモジ道場


 クロモジ道場では、空手王たちと戦うこととなったが、敵ポケモンはほとんどが格闘タイプであった。
 ヒロトの手持ちといえば、格闘タイプに有利なスバメがいるし、アチャモも、飛行タイプの技“つつく”を使えるしで、特に苦労することなく上へあがってゆけた。
「ここが最上階か……よし、ミズホはまだだな!」
 ヒロトは、そのフロアを見回す。トレーナーがおらず、妙に入り組んだ壁もないせいで、階下の各部屋よりも広く見えた。
「なるほど……お前は、クロモジ道場の挑戦者か!」
「ひいっ!?」
 話しかけてきたのは、モジャモジャ髪を一つに束ねた男性であった。
「ひょ、ひょっとして、あなたがクロモジさん……」
「いかにも! この道場の師範だ」
「え、えーっと、ボク、あなたにじゃなくて、クダイシティジムリーダーのシャクナさんに挑戦したいのであって」
「何! シャクナだと!」
 クロモジは大声で返す。ヒロトは目だけで彼を見ては怯えていた。
 部屋の奥で、赤紫色の髪をした、ヒロトより四、五つほど年上であろう女性が反応し、こちらへと歩いてきた。
「えっ、私? もー、こんなことになるから、道場のお手伝いやめさせてって言ってるのに……」
「それだけはいかーん! お前はジムを持つには未熟すぎる!」
「うへぇ……」
 そこまで言ったところで、シャクナはもう一人その場にいることに気づき、一つ咳払いした。
「私が、クダイシティジムリーダー、シャクナです。あなた、ジムへの挑戦は始めてかしら?」
「は、はい! ボクは、ハツガタウンのヒロトです」
「そう、ヒロト君ね。はじめての挑戦で、いきなりこんな大人数のトレーナーたちと戦うのは、大変だったんじゃない?」
「まあそうですね……でも、いい訓練にはなりましたよ」
 ヒロトがそう返したところで、階下から、何かがものすごいスピードでのぼってくる音が聞こえた。
「待ったーっ! はい、私も挑戦したいです! ハツガタウンのミズホです!」
 シャクナは目を丸くした。
「あ、あら、ハツガタウンから二人……ジムリーダーは私、シャクナです」
「はいっ! ちょっとヒロト! 何先に行ってんのっ」
「ボクの方が強いんだから当然だろ」
 ヒロトは得意になって言った。ミズホは何も返さず、息を整える。
「おぬしら、友達同士か?」
「そうです。同じ日に旅立って」
「よし。では、シャクナと戦う前に、ここで一試合してみてはくれんか?」
「えっ」
 ヒロトとミズホは、目を見合わせた。
 道場に入る前、クニヒト、クニタチ組と戦ったため、お互いの手の内はわかっている。
「使用ポケモンは一体。これでどうかな?」
「わかりました」
「私も、やります!」

 シャクナに案内され、部屋の隅の回復マシンに向かう。そこに、渋い筆文字で「回復」と書かれていたことが、ヒロトにはおかしくて仕方がなかった。
 ポケモンたちはすっかり元気になり、審判が下から呼ばれ、二人は所定の位置についた。
 試合開始前、ヒロトは二つのモンスターボールを見比べた。
 ミズホは、恐らくキャモメを出すだろう。キモリを出せば、こちらはアチャモとスバメ、どちらもキモリにとっては戦いにくい相手となる。
 キャモメのタイプは水・飛行。となると。
「試合開始!」
「スバメ! ここは頼む!」
「いくわよーっ、キャモメ!」
 鳥ポケモンたちが同時にスタジアムに現れる。クロモジとシャクナは正座でそのバトルを観戦していた。
「二匹とも飛行タイプ……私たち格闘使いには不利なタイプ。私は私で、ここから何かを学ばないと」

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