たまにスコールから身を守りつつ、新しいポケモンが出てこないかしっかり見ながら、二人はヒウメの森を進んでいった。
「はー、こんなスコールばかりじゃ、ピクニックするわけにもいかないなぁ。かといってキャンプも……なーんて言ってたら、そこの二人!」
夏の森のような緑の服を着た、ヒロトより少し年下かというくらいの少年少女が、ヒロトと、すっかりお天気お姉さんと化した女性を呼び止めた。
「今、私たち、最高にヒマであって」
「オラもお前たちとバトルしたいのであって」
「よし、ちょうど二対二! バトルしよう。……でも、本当にバトルできるんですか?」
ヒロトは女性を見て不安そうに言った。
「もっちろん! ポワルンは天気予報だけじゃなくてバトルも得意よ」
ここまで自信げに言うのだから大丈夫だろう、と思い、ヒロトは連れ歩いていたアチャモに出番だと言った。
アチャモが元気よく飛び出すと、二人の小さなトレーナーたちもポケモンを繰り出した。
「いっけー、アゲハント!」
「こっちはー、ドクケイル!」
優雅な蝶と、攻撃的な蛾。対照的ではあるが、不思議な調和を生み出していた。
「二匹ともケムッソの最終進化系ね」
「え、そうなんですか」
「ええ。まずはじめの進化で、カラサリスとマユルドに分かれる。二度目の進化で、そえぞれアゲハント、ドクケイルになる」
ケムッソから何となく想像はついていたが、やはり最後は飛べるようになるのか、とヒロトは納得した。
「お兄ちゃん、そんなことも知らないのー?」
「い、いいだろ! 君たちはここが遊び場かもしれないけど、僕は見るの初めてなんだから」
ヒロトが口を尖らせた。
まずは彼らの番だ。
「いっくよー、アゲハント、“吸い取る”ぅ!」
アゲハントはポワルンに透明な球体のようなものを放ち、ポワルンがそれに閉じ込められたと思うと、それは無数の小さな光となりアゲハントの元へ舞い戻った。
「ポワワワー」
「あちゃー、結構取られちゃった。でもまずは、ハイ、“日本晴れ”」
ポワルンが太陽に向け目を輝かせると、一気に日差しは夏のように強くなった。そしてポワルン自身も、絵に描かれる太陽のような姿になる。
「へー、かっくいー」
「日差しが強いと、アチャモにも有利だからね」
「そっか」
ヒロトがポワルンに見とれている間に、少年から攻撃をしかけた。
「次はオラだ、ドクケイル、“念力”!」
「おっと」
シャクナのアサナンも持っていた技だが、アチャモが受けるのは初めてだ。
アチャモは空中で身動きができなくなる。きっと彼もシャクナのように、突き落とそうとしているのだ。
「アチャー……」
「よし、いけ、ドクケイル!」
案の定だ。アチャモは地面に向かって猛スピードで落ちる。
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