Stage 6 : お天気さんと新たな仲間


「受け止めて! 今なら炎タイプ同士、ダメージを与えずにできるはず!」
 その声に動いたのはポワルンだ。橙色の大きな球をふわり浮かべ、その上にアチャモは柔らかそうな音を立てて落ちた。
「これは攻撃もできちゃう! “ウェザーボール”!」
 女性が言い放つと、ポワルンはアチャモを受け止めたものと同じ球を、勢いをつけてドクケイルに放った。
 その球はドクケイルの目の前ではじけ、そこから炎が小さく燃え上がった。
 天候によってタイプが変わる、ポワルンだけが撃てる技だ。
「やった!」
 ボールから降りた、ポワルンを見てやる気満々になったアチャモに、ヒロトも指示する。
「“火の粉”−っ!」
「アッチャー!」
 アチャモは、森で鍛えた技を放った。ポワルンから体力を奪っていたアゲハントも、効果抜群のこれには耐えられない。

「かんっぜんに、オラたちの負けです! 参りましたー」
「やばいよこのアチャモ……日本晴れがあったとはいえ」
 アチャモは、褒めてくれた少女に笑いかける。ヒロトがアチャモをすくい、腕の中で優しくなでた。
 そして下からの熱い眼差しに、ヒロトは得意げになる。
「んー、まあ、そこは相性と、ジムバッジ一つ、ってことかな」
 最後の言葉に、少年少女は驚き、バッジを見せて欲しいとヒロトにむらがった。お天気の女性も興味を示す。
 ヒロトはケースを取り出し、ラッシュバッジを見せてみた。三人とも、目を真ん丸くして見る。
「クダイシティの! すごーい。見たら欲しくなっちゃう」
 はい、ここまで、と言って、ヒロトはバッジをしまう。バッジに触れるのは手に入れたトレーナーだけだ、というサクハリーグに挑戦する多くのトレーナーの考えをヒロトも踏襲していた。
「へへっ、苦労したぜー。でも、ケムッソを二回も進化させたんなら、このまま鍛えてったら勝てるようになるかも」
「ほんと!?」
「ホントホント」
 日本晴れの効果が切れていつもの姿に戻ったポワルンの頬を突いていた女性が、それを聞いて提案する。
「あなたたちなら、先にヒウメシティジムリーダー、草タイプのチャービルを倒す方がいいんじゃないかしら」
「ほぉお、チャービルさん!」
 少年少女は、さっきまで一緒に戦っていたパートナーが休むボールを見た。
「なるほど、次のジムリーダーは草タイプ……アチャモもスバメも有利に戦えるとはいえ、気抜いちゃだめだよな」
「そういうこと!」
「オラたちも頑張る! こんな子供でもバッジ手に入れられるってわかったしな」
「おい、こんな子供ってなんだ! このー」
「痛い! 痛い痛い痛い!」

 ケムッソの進化系が見られたわけだが、あの二匹は草タイプではなく虫タイプだ。それに、アゲハントは草タイプの技をレベルの低い時から覚えられるとはいえ、飛行タイプも入っているから、スバメとタイプが被ってしまう。
「あの二匹もよかったけど、やっぱもう少し探すか。お天気のお姉さん、僕もう少しポケモン探しするけど、時間大丈夫ですか?」
「時間なら大丈夫! あ、ねえねえ、次あっち行ってみましょうよ!」
 このように、大抵は女性が道を決める。それで大抵行き止まりにならないため、ヒロトは一度訊いてみることにした。
「お姉さんが決めた道って、いつも合ってますよね。本当は道、知ってたりして」
「な、何言ってるのよ! ……実を言うと、これもポワルンが使える未来予知の応用! それを私が、あなたに伝えてるだけ」
「そうだったんですか」
 納得のいく答えを返され、ヒロトもそこからしつこく訊くことはしなかった。

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