Stage 6 : お天気さんと新たな仲間


 森もだいぶヒウメ側に近づいてきただろうという時、ヒロトは道で思いっきりつまずいた。
 しかもスコールで地面は濡れており、派手に滑って転んでしまった。
「イテェ……しかもドロドロに……」
「大丈夫? あ、またポワルンが」
 スコールの合図に、ポワルンは姿を変えた。すぐそこの雨宿り場に、女性はヒロトを連れていった。
 バトルの時アチャモにしたように、ポワルンはウェザーボールの応用できれいな水の球を出し、ヒロトの身体はきれいな水で洗った。
「着替えは泥ついてない、よかったー」
「雨も止んできたみたいね」

 また道を進んでいると、同じようにつまずいた。今度は足に力を入れ、バランスを持ち直し、転ぶことはなかった。
「なんだー? 身長伸びてんのかな、ならいいけど……ん」
 ヒロトの視界の下のほうを、緑色の何かがちらついた。
「動く草!?」
 その草が通ってきたであろう道が隆起している。ポケモンか、としゃがんで覗き込むと、ぎりぎり地面から出ていた赤い目と視線がかち合った。
「ナーゾー!」
「ふぎゃっ!」
 そのポケモンは地面から出るなり、ヒロトの顎に頭突きした。
「あが……あが……」
 ヒロトは顎に右手を当てて痛がる。既に涙が出ていた。
 ヒロトと、そのポケモンの間にアチャモが割って入った。
「ナゾノクサね! 随分気が立ってるみたいだけど……」
 ナゾノクサというポケモンは、怒りをあらわにしてアチャモに体当たりするが、アチャモは道で滑って避けることができた。
「いきなり痛ってーな! 僕が何をしたっていうんだ」
「ナーゾー」
「まあまあ」
 女性が一人と一匹をなだめる。
「ナゾノクサは、しっかり育てて二回進化させれば、なかなか頼れるパートナーになる草ポケモンよ」
 なかなか頼れるパートナーになる草ポケモン。
「そ……」
 ヒロトの瞳がぎらり光る。
「それを聞いて黙ってはいられねーなぁ……」
 ナゾノクサはおじげつかず、ヒロトを見返したが、冷や汗が垂れるのは仕方がなかった。
「やる気ね」
「いくぞアチャモー! “つつく”!」
「チャッモー!」
 アチャモは気合を入れたが、目の前の敵に攻撃が届くことはなかった。
 ぬかるんだ地面を利用して、ひらりかわしたのだ。
「ちっくしょー……」
「まるでイゲタニのポケモンみたいだわ……」
「イゲタニ?」
「サクハ東部、熱帯雨林地帯よ。何度か行ったことがあるんだけど、いつも地面がぬかるんでるから」
「なるほど……それならこれだ、“火の粉”!」
 直接攻撃でなければ当たるはず。アチャモは深く息を吸ってから火の粉を出した。
 少しは避けられても、ナゾノクサを追うようにしていけば、少しずつダメージを与えていけるだろう。
「ナゾッ!」
「また埋まるつもりかっ!」
「大丈夫。頭についた草を狙ってもダメージは与えられるわ!」
 アドバイスを聞いて、アチャモはさらに攻撃を強める。その熱さに耐えられなくなったのか、ナゾノクサはまた地上に出た。
「ナゾー! ナゾナゾナーゾー!」
 そのまま、アチャモに攻撃することなく、あたりを駆け回る。何を訴えているのか、それを知りたくてずっと見つめていると、さきのヒロトのように滑って転んでしまった。
「あ、ナゾノクサ!」
「ナーゾ……?」
 ナゾノクサはその場に座り込む。元気がないのか、頭の草も張りがなくなった。
「どうした?」
「ナゾッ!」
 ヒロトがなぐさめようとすると、ナゾノクサは、ヒロトの肘に突進した。
「あーのーなー、人が心配してやってんのにー」
 鞄に入っていた、空のモンスターボールを握る。割れそうなくらい強く握っていることが女性にもよくわかり、やや恐れた。
「もうあったまきた! ダメージは充分だろ、入れ!」
 ヒロトはモンスターボールを投げた。

 ナゾノクサに抵抗する力は残っていなかったのか、すんなりとボールに入った。

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