Stage 6 : お天気さんと新たな仲間


 ヒロトはそっと、ボールを拾った。もうあれほど力は入っていない、と、女性は安心しかけたが、またヒロトの手が力み始めた。
「あの、血管、浮き出て」
「なーんか煮えきらねーっ!」
「はい、そうですよねー」
 ヒロトは勢いよくボールを地面に叩きつけ、捕まえたばかりのナゾノクサを外へ出した。
「ったく、何があったんだ?」
「……ナゾ」
 ポケモンの気持ちはなんとなくわかっても、具体的なことまではわからない。
 このナゾノクサは何かに怒りを感じていて、そしてそれはどうにもならず落ち込んでいる、というところまでは何となくわかるのだが、その先はわからない。
 だからナゾノクサを捕まえても、何をしてやることもできず、ヒロトは悔しくなった。
「今は、いいんじゃない」
「えっ」
「仲良くなっていけば、わかることだってあるでしょう」
「……」
 そうだ、もうナゾノクサは仲間だ。それなら、今すぐ問題を片付けなくとも、これから長い時間を使って分かり合っていけば良いのではないか。
「アチャモ、こんなんできるか? えっとな……」
 ヒロトはアチャモに耳打ちした。アチャモは複雑な表情で聞きつつも、最後ははっきりと頷いた。
「アチャッ」
 アチャモは、ナゾノクサの前で炎を出す。だが決してナゾノクサに触れることはなく、ナゾノクサは、ただ暖かさを感じた。
「これは……」
「ポワルンのウェザーボールからヒントを得たんです。アチャモを助けてくれた時の……」
 暖かい空気に触れ、ナゾノクサは少し落ち着いた。
 和らいだ表情を確認すると、ヒロトはボールからもう一匹の仲間を出す。
「今バトルしたのはアチャモ、そんでこいつはスバメな。……これからよろしく」
「ナゾ」
 ナゾノクサは、一つお辞儀した。

 またしばらく歩いていくと、森の出口が見えた。
「あ、ついたわ! よかったー」
「これもポワルンの未来予知のおかげですね」
「……ええ、そうね。確かあなたは、ジムリーダーのチャービルに挑戦するのね? 彼は強いけど頑張ってね、応援してるわ!」
「ありがとうございます」
「それじゃ、私は一旦、この道路を探索するから、ここで」
「はい、さよなら!」
 お天気お姉さんと別れ、森を出ると、乾季らしい薄水色の空が広がっていた。
「……あれ?」

 何とかなってよかった、と女性は一人ため息をついた。
「隠し通すのは大変ね。私がこの森で迷うはずないじゃない……さて、名前を聞き忘れたけど、あの少年。なかなか将来を期待できるわ。要マークね、ポワルン」
 ポワルンにそっと囁くと、ポワルンはまたしても、雫型の姿になった。
「……ユート団」
 じきにまた、ヒウメの森に雨が降る。このままスコールが続けば、雨季の森とほとんど変わらなくなるだろう。
「私は私のやり方で戦うわ」

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