いつも空っぽであるはずの郵便ポストに、一通の手紙が押し込められていた。
その家をある意味で占拠している青年ステラは、なんだいたずらか、と思いつつも、その封を切った。
ステラ様
あなたを、サクハ地方バトルタワーのブレーンに相応しいとみて、このお手紙をお送りしました。
本当に相応しいか、以下のところまで来て確かめさせてください。
それから、住所が書かれて手紙は終わり、他に簡易な地図と船のチケットが同封されていた。
「なんだ……これ」
バトルタワーは、今住んでいるシンオウにはないが、シンオウ北東にあるバトルゾーンと呼ばれる土地にあるため、シンオウの強者たちは皆そこへ挑戦に行っている。
ブレーンといえば、その施設のトップ。
「よくわからないけど……行くしかないな」
チケットに書かれた日付に港に行くと、ミオシティの港にぎりぎりおさまる大きさの豪華客船が、ステラを待ち構えていた。
この船を出し、更にチケットを無料でつけた人物は誰か、と思わず考えてしまうほど高級感溢れるものだった。
「お待ちしておりました。どうぞ」
ステラが船内に入ると、案内の者に促され、一階の席についた。
ご注文がお決まりでしたらベルでお呼びくださいと言われ、案内の者は去っていった。
ステラはまず、辺りを見回す。いかにも凄腕といった形相をしたトレーナーたちが、ポケモンと共に、美味しそうなご馳走を頬張っている。
それを見て、ステラは早速ポケモンを出し、メニューを読み漁った。
「いただきまーす!」
思わず得られたご馳走を、ステラは喜んで食べ始めた。
しばらく食べていると、船が停まった。ここから乗ってくる人もいるのかと、ステラは入ってきた方を見た。
「クチバ港です。なお、下船はできません」
入ってきた数人の中に、見覚えのある女性がいた。自分より濃い茶髪をした、いかにもお嬢様といった出で立ちの……。
「エデル!?」
ステラは思わず席を立った。エデルを知らないポケモンたちは、主人を見上げて首を傾げた。
「その声は……ステラ!」
エデルはすぐステラに気がついた。
「お久しぶりですわね! ということはあなたも……」
「えっ」
「ほら」
エデルは、ステラがもらった手紙と同じ封筒のものを取り出した。
「わたくしも、ブレーンに相応しいと」
「えっ……ってことは、まさかのライバル? えっと、まあ、座れ!」
エデルはそう言われ、ステラの向かいの席についた。
「あなたはどの施設に? わたくしは、バトルパレスという施設だったのですけど」
「パレス? パレス……ではないな、あ、あれだタワー!」
エデルは、それを聞いて驚きのあまり手で口を押さえた。
「まあ! タワーといえば、どのフロンティアでも特別に扱われる施設ですわ。それこそシンボルのような」
「えっ、そうなの? すげえ! んで、オイラとエデルがタワーのブレーンの座を争うことはない、と」
「そういうことですわね」
エデルはメニューを開いてボーイを呼び、サクハ料理を注文した。
しばらくの間、昔話に華を咲かせていると、急に船内の証明が消えた。
「えっ」
辺りがざわめく。その間に、カチャカチャと食器の音が鳴った。どうやら皿を下げているらしい。
そしてその約十秒後、ひとつの場所にスポットが集まった。
「レディース・エーン・ジェントルメーン!」
その発言者に注目が集まった。かなり縦に長いコック帽を被っている。
「ワタシの、五つ星とも呼ばれる料理、美味しくいただいてくれたかなー? それじゃ、これからバトルだよ! 誰でもいいから、一対一でバトルして、勝った人だけ残ってちょーだい!」
辺りがさらにざわめいた。
「い、行くぞ! オイラたちがバトルすることは避けよう。エデルはそっちに!」
「わかりました!」
ステラたちは、一人で来ているトレーナーを捕まえ、バトルを申し込んだ。
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