北の開拓者たち


「それじゃ、バスターミナルに向かいますか。それで北東のイゲタニシティに行って、そっからケーブルカーに乗り換え。フロンティアはケーブルカー直通だよ!」
「まあ、ケーブルカー会社に延伸してもらうためにお金使うわ、不動産バブルは崩壊するわで、フロンティア内部は中々残念なんだけどな」
「カシスー、余計なことは言わなくていいんだよ? バスターミナルまではワタシについてきてくださいねー」
 列を保ったまま、ブレーン候補たちはターミナルへと歩いた。ほとんどが若者だが、中には年配の者もいる。
 東回り組、西回り組それぞれにバスは三台、計六台用意されていた。リンドウ観光と書かれた大型のバスで、ブルーから薄紫のグラデーションが美しい車体であった。
 ステラとエデルは同じバスに乗ることができた。
「あー、早くカグロとも喋りてーなぁ! カグロはどの施設のブレーン候補なんだろな?」
「彼ならどんなバトルでも器用にこなせそうですね……予想できませんわ」
「だよなー」
 それから、ステラたちは外を見る。古い遺跡がある茶色い町を通っているところだ。
「ダイロウシティです」
 バスガイドの女性が言った。ロダンも、それから、助手のイロハとカシスも、別のバスに当たったのだ。
「神話に出てくる場所の遺跡が多く残る、歴史ある町です。バトルが終わりましたら、是非ご観光を」
「バトルが終わったら、か……」
 ステラは右手を握り締めた。
「負けてらんねーな」

 バトルフロンティア、すなわち今日のブレーン選抜バトルの会場にたどり着いた。
「あれがタワー、その後ろにそびえるのがアカガネ山ね。山を越えればポケモンリーグ本社ビル。つまり、サクハで一番高いアカガネ山を、強いトレーナーが集う二施設が囲んでるってこと。アカガネ山もまた、強いポケモンがうじゃうじゃいる。なかなか面白いだろう?」
 開業前であるから、アカガネ山側に並ぶ大きなハコに人がいないことはわかるが、整備された土地区画に何が建つわけでもなく放置され、荒地同然となっているさまを見て、エデルはいい気がしなかった。
「それじゃ、タワー、ファクトリー、パレス、ホールウェイで分かれてねー」
 イロハ、カシス、そして小さな子供二人――緑の髪を肩まで伸ばした少年と、花のついた帽子をかぶった少女――がプラカードを持って並んだ。
「タワー……ここか。カグロ、どこだろう……」
「わたくしはあちらですわ。では、また」
「ああ、絶対勝ち抜こうな!」

 ルールはごく単純なものであった。
 施設別に分かれてバトル。バトルはそれぞれ、四つの扉がある小部屋で行われ、勝った側が、廊下を通って次の部屋へ行くことができるか、もしくは待機して次のトレーナーを待つ。負けた側は、外へ続く扉で外に出る。
 部屋と廊下は円状に配置されていて、どちらの廊下を通ればいいかは逐次放送で流れるというのだ。
 そして最終戦が終われば、中央の扉を開けて大部屋に入ることができる――大部屋は天国のようなものだろう。
 大部屋は、他の三施設のブレーンを決める、同じような仕組みのものと繋がっているという。
「ではステラさん、右の扉を開けてください」
 放送で指示が流れた。ステラは早速扉に走り、勢いをつけて開けた。
「よし、オイラとバトルだ!」
 ステラは、ルンパと名づけたルンパッパを繰り出した。

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