共同生活が始まった。
 カラジは料理ができることを他の二人が知ると、彼を炊事担当とした。
 ユッカは、掃除や洗濯。チャービルはというと、たまに街中にくりだしてはポケモンバトルで勝つ、いわば金稼ぎが担当であった。
「この町の子供で、オレより強い奴なんかいねぇしな、今日もがっぽりだ」
 チャービルが戻ってくる時はいつもそう言う。懸賞で手に入れたタネボーを相棒に戦っているということだが、彼がどんな戦い方をするのか、カラジは知らなかった。
「あ、チャービル、サイトの広告消しといたけど、大丈夫だよね?」
「ああ。一人増えれば充分。しかも、それが情報通のカラジときたら」
 チャービルは金庫に賞金を入れながら言った。

僕たちにとっての前兆はこれだったのかもしれない

 カラジの作った肉じゃがを、三人とも半分くらいまで食べた時だった。
 地上から、何かがうなるような音がした。その余韻が地下室にも響く。
「……発砲か?」
 こういうことがある度にカラジは肝を潰されたが、チャービルとユッカにとってはもう慣れっこらしい。
「うう、また」
「しっ!」
 チャービルが言葉なく叱咤すると、カラジは口を閉じた。扉にぶつかった何かが鈍い音を立て、少女の悲鳴がかすかに響く。
 その声を聞いて、チャービルはすぐに階段を駆け上がった。
 扉を半分開け、その少女の顔も確認せずに地下室に連れ込み、鍵をかけた。

「思い切ったことを……。もし、私が、敵組織のスパイだったらどうするの?」
 息も絶え絶えだったが、肌の濃い少女は強気で言った。少なくとも、祖先を同じくする移民の子ではなさそうだ。彼女の問いに、チャービルがあっけらかんと答える。
「考えてない。でも、よく見て。この子、何者かにポケモンで攻撃された痕がある」
 ユッカは、衰弱しきった少女を見た。確かに、ポケモンに攻撃されたような痕があった。となると、無差別発砲ではなく、誰かが明確にこの少女を的として攻撃したのだろうか。
「……ううん」
 少女にまだ意識はあるようだが、身体は傷だらけだ。カラジは布団を敷き、ユッカは救急箱を用意した。
「彼女の肌、服装。おそらくは北サクハ系の一派だ。この子が元気になったら、事情を聞こう。ユッカ、着替えを」
「うん」
 ユッカは彼女を着替えさせ、元々着ていた彼女の服はきれいに洗っておいた。

 翌朝、カラジが起きた頃には、その少女は既に起き上がっていた。
「あ、あの」
「ポワルンは」
「えっ」
「あたしの、ポワルンは!?」
「え、えっと」
 カラジがうろたえていると、チャービルとユッカも目を覚ました。
「あーチャービル、いい時に! どうしよう、この子がポワルンって」
「まあ待て。朝には着替えと歯磨きというものが」
「はぁ……」
 三人は各々普段着に着替えた。ユッカは、はじめ少女が着ていた服を持ち主に返した。

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